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■ストーリー
「お兄ちゃん――正座」
ガチリ――と教室の引き戸に鍵をかけながら、ひと言。
ああクソ……また、沙織の悪癖が始まるよ……。
さかのぼる事数分前。
(あのオッサン……なんてことしやがるんだ……!)
「ぐふっ。鈴代くんは本当にいい子だねえ」
頭を撫でる中年教師。
「あ、あはは……先生、恥ずかしいです……」
そのほほ笑みを見ていると、ドクドクと心臓が高なっていく。
いつの間にか握りしめていた両手には汗が滲み、喉はカラカラ。
無意識に足を止めて、その可愛らしい笑顔に見入ってしまう。
そう、俺は実の妹である沙織に――。
――恐怖していた。
沙織と、目が、あった。
「鈴代先生、お待たせしました」
さも最初から俺に呼び出されていたかのように、沙織がこちらに近づいてくる。
「鈴代先生。お時間もありませんし、早めに済ませてしまいましょう?」
「あ、ああ……そ、そうだな……」
俺が頷いたのを確認すると、沙織はそれ以上一瞥することもなく歩き出す。
「……ふふ。鈴代先生ったら。早くしてください」
ゆっくりと振り返った沙織が、朗らかな微笑みを向けてくる。
その笑みに、ゾクッ――とした寒気を覚えた。
(……これ以上、機嫌を損ねない方がいいか……)
観念して、俺は沙織の後についていくのだった。
そして、今に至る。
「……はあ……」
言われるがまま、その場に正座しようとして――。
「――下、脱ぎ忘れてるけど?」
そんな風に、沙織に止められてしまう。
「う……さ、さすがにここはマズイんじゃないか……? ほら、昼休みだから廊下に人も通るだろうし……」
「ふーん、そう。だから?」
顎だけをクイッと動かして『脱げ』と促してくる。
……ダメだ、俺が思っているより機嫌が悪いのかもしれない。
「……わ、わかったよ……」
「ほら、見ていてあげるから早く脱いで」
クスクスと笑いながら、こちらを見つめてくる沙織。
その愉快そうな視線を受けながら、俺はズボンを脱ぐしかなかった。