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森番小屋と呼ばれていたが、ちょっとした屋敷のようだった。雪から飛び出した小さな出入口の背後に、ちゃんと屋敷があって、雪に埋もれた通路でつながっていた。更には、雪の中にも建物の一部が隠れていた。
温かい湯に浸って、ハルは若様たちのいる部屋に行く。毛足の長い絨毯に腰を下ろし、公爵夫人はくつろいだ服装で大きなクッションに寄り掛かっていた。
「運転が出来て楽しかったわ」
裸足の足の裏まで優美だ。
「父上が怒っておられます、きっと」
「朝までは通信は遮断、籠城です」
「朝になったら戻るのですね? 絶対ですよ」
ふふと、公爵夫人は笑った。
「家出したかったのはあなたなのに、今度は帰りたがるのね」
「父上は母上のことになると、必死だから……」
公爵夫人はハルを手招きし、銀のトレーを指さした。ハルは三つのカップにお茶を注ぐ。一つは……ハルの分だろうか。
「あの人のことは放っておきなさい。いいから座って、もっとこっちへいらっしゃいな……」
あなたもよと、ハルは呼ばれる。恐る恐る、公爵夫人の足先に腰を下ろした。
「小さな家出をしているんだから……三人で。今日は堅苦しい暮らしのことは無しにしたいわ。ねえ……ゲームをしましょう」
「何か持ってこさせますか?」
「そういうゲームじゃないの。嫌だっていうゲームで……娘時代に遊んだのよ。皇妃様とも遊んだわ。相手がいつもしていることを、やれって命令するの。命令されたら、大きな声で嫌だって答えるの。それだけ」
「それだけ?」
「そうよ。皇太子殿下に嫁ぎなさいって言われて、嫌だって叫ぶの。楽しかった、皆で笑い転げた」
「それは不敬では……」
「ゲームよ、だからいいの。勿論、親には内緒よ……仲良しの娘たちだけの遊び。さあ、何か命令して頂戴。いつも、わたくしは何をしているかしら」
「え……ええと……お部屋でゆっくりしていなさい」
公爵夫人は笑った。