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宮殿の愛玩奴○用の衣裳部屋で、ハルは鏡に自分の体を映した。裸身に、宴の為の衣装を身に着けていく。
今夜は年若い貴公子ばかりが集まるという。ハルは宴には侍るが、その後の閨には呼ばれない。宴で侍って、酒を注いで、媚態を作るだけだ。もう一年も、そんな状態が続いている。
役立たず。
それでも宮殿に置かれているのは……まだあどけなさの残る少年の頃に、皇太子の命で公爵家に貸し出されたからだった。
寄宿舎から宮殿に戻されて暫くは、皇太子の寵愛を得ていた。皇太子が懸想する貴公子が、ハルを抱いたというだけの理由だった。でも、その執着は徐々に薄くなった。
やがてハルは、他の愛玩奴○と同じように声を取られた。貴人達の秘密の会話や閨でのことを話さないように、だ。皇太子はもうハルの言葉に、全く興味が無くなったのだ。
喪失感はあった。いつかこうなるとわかっていたけれど……もの寂しさが、あった。
一緒に寄宿舎にいた愛玩奴○のうち、同じ頃に皇太子の下にいた同輩は、食事係にされた。彼は声を取られなかった。
やがてハルは、自分の悪い噂を耳にした。身に覚えのない噂だった。
そして皇太子から閨に呼ばれなくなった。
よくあることだ。皇太子の好みの年頃を過ぎても、ハルが閨に呼ばれるのが気に入らない誰かが、噂を流したのだろう。まだ声を取られていない、新顔の若い奴○に違いない。
それでもハルは、宴席には呼び出された。皇太子の足元に腰を下ろし、他の奴○達と一緒に皇太子に媚びた。賓客の相手をすることもあった。
そんな頃、である。
一年ほど前のその日、宴に皇族の一人が来ていた。数年前に寄宿舎に訪ねてきたて、ハルが一夜の相手をしたあの皇族だ。寄宿舎にいた愛玩奴○が一人、彼に下賜されたのだが、以来どうなったか噂をきかない。貰われていく時に随分泣いたのだという。
皇族はハルを見つめた。公爵家の若君の初夜をいただいたんだねと、言った。
「声を取ってしまったんですか、殿下。勿体ないな、いい泣き声だったのに」
皇族が手招きをした。ハルは主を見る。
「相手をしておいで」