声優さんと絵の雰囲気が好きだったので購入。結論としては大満足です。
高梨謙吾さんの淑やかで美しいお声で紡がれるミステリアスな物語は、睡眠導入としてもボイスドラマとしても非常に楽しめました。時折主人公に甘える様子がとてもとても可愛らしくて、特に「耳をいじられるのは…嫌い?」というあどけなくも妖艶な台詞がお気に入りです!
そして肝心のストーリーについてですが、作中で何度も登場した「与える」「奪う」というワードが印象的でした。
私はアヴァリスを「奪う者」、対して主人公は「与える者」なのだと感じました。アヴァリスは王子、そしていずれは王になるという立場上、他者に与えることができる人でないといけません。それはアヴァリスにとって理想であり、やらなくてはいけない義務でもあるのでしょう。しかしアヴァリスという存在の本質は、「奪う」こと。どれだけ望もうとも、その部分は決して変わりません。与えなくてはいけないのに、彼はただ他者から奪うことを欲しています。
奪いたい欲望と与えなくてはいけない義務。それらが複雑に絡み合って、どうすればいいのかわからず困惑するアヴァリスを主人公が包み込むように寄り添うシーンは、彼女が聖母に見えるほど歪ながらに美しかったです。
もともとメリーバッドエンドが好きなので、作品全体の仄暗く背徳的な雰囲気もラストシーンも至高でした。答えのない作品故に考察が延々と続きそうですが、これからも夜のお供にしたいと思います。