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Cercle | ロールシャッハテストB |
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Date de sortie | 28/11/2022 |
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Accouplement | |
Auteur | まさみ |
Illustration | きたがわワッショイ |
Âge |
Tous âges
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Format du produit | |
Format de fichier | |
Autre | |
Langues prises en charge | |
Nombre de pages | 12 |
Genre | |
Taille du fichier |
270,43KB
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- (129.16KB)
Résumé du produit
あらすじ
■あらすじ■
「知能犯っしょ」
「確信犯だな」
「今、どうせ余生みたいなもんだし。好きな事したいんだ」
心臓疾患持ちの弟・太一は今日も一人暮らしの兄の部屋に入り浸る。
暇を持て余した2人はジェンガをしながら他愛ない話に耽るのだが、彼ら兄弟は互いに言えない「隠し事」を秘めていた……。
弟×兄のプラトニック片想いを描いた短編。
表紙はきたがわワッショイ様にお願いしました。
ありがとうございます。
登場人物紹介
本文サンプル
太一は生まれつき心臓の畸形だった。
生後九ヶ月の時余命はもって十歳までと診断され、父さんと母さんは悔いないよう残り七十年分愛することにした。
「兄貴んちって品揃え悪いよな、ゲームの」
「ゲームなら家でやれよ、俺んとこに寄らず。勉強の邪魔」
「いいじゃん別に、電車で三駅なんだから遊びにきたって。つか大学とそんな距離変わんねーしうちから通えばいいじゃん。わざわざ一人暮らしとかわけわかんね、金もったいねー。やっぱさ、あれ?親元を離れ自由を満喫したいとか支配からの逃走気取っちゃってんの?」
「尾崎か。古い」
「家でゲームやってっとババアがうるさいんだよ、心臓に悪いからってシューティングやホラーやらしてくんねえしさ。俺ができるのぷよぷよとかテトリスとか落ちゲーだけ。あと太鼓の達人?」
「音ゲーも十分体に悪い。めちゃくちゃスタミナ使うぞあれ」
そんな太一は十六歳になった。
高校一年生だ。
どうやら反抗期とやらに突入した模様で、俺のアパートにたびたび入り浸ってる。
両親の過保護ぶりにうんざりして逃げてきた先では放任される。
かえってこっちのが居心地いいみたいで、へたくそな鼻歌まじりにゲームソフトをあさってはとっ散らかす姿は実に伸び伸びしてる。
テレビの前に胡坐をかいてゲームソフトを漁っていたが結局お気に召すのがなかったらしく、テーブルでレポート執筆中の俺んところに這いよってくる。
「せっかく弟が遊びにきたんだから、むずかしー本読んでねえで対戦しようぜ」
「レポートの締め切りが近いんだよ」
太一はわがままで気分屋だ。
過保護に育てられたせいで堪え性がない。
ごねる太一を無視し、フローリングにじかに置いたテーブルに向かい、分厚い専門書をぱらぱらめくってノーパソのキーを叩く。
太一とは四歳離れてる。
俺は今大学生で、心理学部に籍を置いてる。
大学生は暇じゃない。少なくとも用もないのにだらだらずるずる一人暮らしの兄のアパートに入り浸って、ゲームや漫画に現を抜かす暇人の弟をかまうほどには。
参考書から顔も上げずレポートの下書きを続行すれば、ご不満そうに鼻を鳴らし、サバンナのライオンの如く悠然と寝転がる。顔の周りにたてがみのように茶髪が広がる。
同じ親から生まれたのに俺たちはあんまり似てない。
俺はごくごく平凡な顔をしている。
外見的な特徴といえばセルフレームの眼鏡と芯の固い黒髪、神経質そうな目つき。服のセンスもださい。もさっとしてる。
太一は俺と正反対、明るい茶色の髪は中途半端な長さで、だけどそれがさりげなくお洒落に見える。非の打ち所ない美形というよりも造作が崩れているのが魅力になる快活な顔立ちで、女の子にモテるのがよくわかる。
……実の兄から見ると下がり気味の口角や笑ってるようで笑ってない目元にそこはかとなく一癖ありそうなルックスだが。
太一がテーブルに乗っかった分厚い本の一冊を手に取る。
「なに読んでんの」
「ジグムント」
「だれ?外人?」
「フロイトって言えばわかるか」
「医者だっけ」
「精神医学の始祖。ユングと二大有名人。学校でやらないか」
「聞いたような覚えはあるけど……で、その人の本楽しいの」
「面白い」
ぐうたら寝転がった姿勢のまま片手でテーブル上をさぐり、取り上げた本をぱらぱらめくる。
「兄貴さーうち帰ってこねえの」
「うん」
「なんで」
「帰りたくないから」
「俺のせい?」
本のページを惰性で羽ばたかせつつ言う。キーを叩く手がとまる。
「俺がいるから、帰ってこないのかなって」
「………もう大学生だぜ。とっくに親離れしてるよ、どっかのすねかじりと違って」
今さら寂しさを覚えはしない。
そんな時期、とっくに過ぎ去ってしまった。
コイツは悪くないと理屈ではわかってる。
「兄貴さあ、かまってよ」
「うるさいよ。帰れよ。忙しいんだ、今手放せないの。見てわかんないか」
分厚い本をほうりだし寝転がる太一。
半袖シャツから突き出た二の腕、なめしたような肌に淡く光る産毛が綺麗だ。
「焼けたな」
「走ってっから」
太一は陸上部だ。無謀にも。はにかむ顔に白い歯が映える。
中学では帰宅部だったが、高校にあがると同時に念願の陸上部に入った。親は心臓に万一の事があったらと反対したけど、どうせ長く生きられないんだから好きなことをおもいっきりやりたいと無理矢理入部したのだ。
「ずるいよな」
太一はずるい。
余命をたてにしたら親は逆らえないと知ってて、その手を使ったのだ。
「知能犯っしょ」
「確信犯だな」
「今、どうせ余生みたいなもんだし。好きな事したいんだ」
太一は常に死を意識しないではいられない環境で育ってきた。
年に数回、軽い発作が起こる。
重篤な発作は三年に一度の頻度で起こる。
死は常に太一に寄り添ってる。
明るいところほど深くて濃い影ができるように。
ジェンガを1つ1つ積み上げ高くしても、崩れるときは一瞬。