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俺は、温泉旅館の事務室で一休みしていた。
この温泉旅館は俺の実家だ。
両親は、寄り合いの関係で数日の間、出かけることになってしまった。
小さな旅館で働き手二人が抜けると仕事がまわらなくなってしまうため夏休み中の俺が呼び戻されたのだ。
「あら~? もう、息切れしちゃったの?」
そこへやってきたのは湯香里さんだ。
俺の兄の妻――俺から見れば兄嫁である。
今は、この旅館の若女将として働いている。
「そ・れ・と・も~。ご褒美がないとやる気が出ないのかしら?
お姉さんでよかったら、ご褒美になってあげるけど?」
兄は――去年に病死した。
湯香里さんは、いわゆる未亡人だ。
それにもかかわらず、そのような冗談を言うのは不謹慎だと思う。
お客の前では、淑やかで優美な若女将なのに……俺の前ではこれだよ。
その夜……宿自慢の露天風呂に浸かりながら、俺は物思いにふけっていた。
湯につかりながら夜空の星を眺めていると、誰かが入ってきた。
「ね……義姉さん……? ど、どうして……こんなところに?」
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