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これは飲んだくれた父親と、その父親から「テメェ」と呼ばれる娘とで送る、ある不幸な親子のお話――。
夕方、学校を終えて自宅アパートの前でドアノブを見つめる少女。彼女の右手はドアノブに触れる寸前で止まっている。
だが家に入るために少女は「ガチャ」とドアを開けて玄関に足を踏み入れる。部屋のすぐ上りには、泥酔した父親が眠っていた。
機嫌がコロコロと変わり、時には暴力を振るうこともある父親の寝顔に目を向けて、思わずホッとする少女だが、部屋いっぱいに充満した酒の臭気を換気したいと思い、少女は部屋の窓を開けようとする。しかしそれがいけなかった。
窓を開けた拍子に、なぜか窓枠に置かれたビールの空き缶が左に揺れて、それが酎ハイ用に使われる炭酸水ボトルに落っこちて、倒れた酎ハイ用に使われる炭酸水ボトルがテーブルの上の他の空き缶やティッシュペーパーを弾き倒したのだ。もちろん音を立てて。
目を覚ます父親。彼は我が娘を「テメェ」呼ばわりで悪態をつくと、コロコロと変わる機嫌の最悪の目が出たとでもいうようにムッと立ち上がり、彼女を右足で思いっきり踏みつけるのだった。