BG3巻では、前半に文化祭編を収録。
その圧倒的なパフォーマンスと、この巻では割と活躍している音楽教師の黒木先生とのデュオが光っています。
そしてそこでの反響を踏まえ。
仙台の地を離れ、勝負の世界に身を投じる覚悟を決めた大の姿が描かれた巻でもある。
映画を先に見た層から見ると、この辺の物語り方は「前日譚」的な要素を感じる気風もありますね。
この巻は全体的に、将来への期待と不安が交錯しています。
そして、先に進むがゆえに疎かにできない、色々な過去との決別も描かれている。
その象徴的なエピソードが「バーナムラブ」作曲でしょう。
私自身の経験を含めて、このエピソードはあまりに強烈に刺さりました。
18歳を迎えた大の初めての作曲という点でも重要ですが、やはり
「死は死でしかなく、残された者は受け止めきれない」
「音楽葬は、受け止めるためのクッションを与えてくれる」
こうした音楽そのものの価値に迫る内容こそが重要でしょう。
この写実的な描き方は、黒木先生が語る音楽の意義とリンクしている。
そしてこれらは、その世界で戦おうと考える大とも直接リンクしている風に見えます。
過去との決別という意味では、最後に置かれたジャズバー「BIRD」でのオープンマイクの回も大きい。
三度にわたって描かれたこのバーの完結編を、次への引きに置いている形でしょうね。
映画ファンとしては、大晦日の河原における大と黒猫の邂逅エピソードは味わい深い。
映画の冒頭に置かれたこのシーンは、実は映画と原作漫画とで描写が異なります。
この漫画上では将来への不安を雪の苦しさに仮託し、黒猫が羅針盤として機能している。
一方、映画では将来への期待を表すために(そしてここから展開する映画への期待を煽る為に)、ポジティブな反応を示している。
作中の状況が違い、シーンの役割が異なっているがゆえの変化。面白いですね。
今巻も文句なしに面白かったです。
星五つ、揺るがないなあ。
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