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「破戒」。この二文字を見て、文豪・島崎藤村の代表作を思い起こした人は多いだろう。
しかし、その意味に思いを巡らせたことのある人はどれくらいいるだろうか。
破戒とは、文字通り「戒め」、つまり特定の行動を制限する縛りを「破る」ことだ。
小説『破戒』の中では、父親から被差別部落出身であることを隠すよう戒められてきた小学校教師が、さまざまな人生経験ののち、生徒に出自を告白することで過去の自分と決別し、新たな人生を踏み出す自己再生の物語として描かれる。
明治時代に書かれたこの小説のテーマと時代性は異なるが、根本的な構造が同じで、令和の日本においていまだに残り続ける無意味な戒めがある。
それが「我慢」だ。
日本ほど、我慢が美徳とされる国はない。日常生活のあらゆる場面で、仕事やプライベートのすみずみまで大小の「我慢」が当たり前になっていると言っていい。
そして、日本の歴史の中で戦時中を除き、最高レベルの我慢を強いられている時代がある。
それが「いま」だ。
本書では、令和の日本社会全体に蔓延する「我慢」という名の宗教に抗い、「破戒」して行動につなげる考え方と具体的な方法を伝えていく。(「はじめに」より)