地域批評シリーズ編集部 Autres
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岐阜は実にビミョーなポジションの県である。日本の中心にありながら、希
薄なことこの上ない存在感。その要因はお隣・愛知(というか名古屋)の光芒
が強過ぎるからだろう。中部一の大都会・名古屋の影に隠れ、まったく目立た
ないのだ。今や都道府県の知名度を計る基準になっている魅力度ランキングで
36
位。この中の下の順位もいかにも岐阜らしい。どうせならどんじりにいて逆
目立ちすればいいのに、そうならないのはその存在感の希薄さゆえだ。
だが、そんなポジションに甘んじつつ、岐阜は意外としたたかだ。交通の要
衝という立地と名古屋にしっかりと依存し、中京圏の一角として産業集積が進
んでいる。しかも現代産業だけではなく、刃物に焼物、そして世界遺産にも認
定された和紙など伝統工芸も盛んで、国内屈指のものづくり県になっているの
だ。とはいえ、その旨味を享受し、発展しているのは美濃地方である。対する
北の飛騨地方は開発も遅れ、のどかな田舎が広がっている。
このように南北で明らかにコントラストが違う岐阜だが、それも仕方がない。
山や川で遮られているように、もともと美濃と飛騨は同じ国ではなく、文化、
言葉、風習、人々の気質も違う。加えて強引にひとつの県にされてしまった因
縁もあり、両者には目に見えないライバル心、はたまた羨望めいたものも存在
している(お互いに無関心を装っているけどね)。
ただこの2地域のスタンスは実にもったいない。それぞれに強みも個性もあ
るのに、「岐阜」の名の下、ひとつにまとまれないから、それぞれの長所がそ
れぞれの短所を補完できず、県の飛躍を阻んでいるのだ。この「まとまれない」
のが、岐阜県の残念な特徴で、美濃と飛騨の関係にとどまらず、美濃の内部も
バラバラでまるで一体感がない。
本書では美濃と飛騨双方の地域性、問題点を取り上げ、岐阜県の本質を暴き
出していく。岐阜県が真の南北融合を果たし、「中部の雄」として脱皮できる
のか、その未来をこれから探っていくことにしよう!