藤のもっぷさんのレビュー一覧

貴族どうし、政略結婚したご夫婦の物語です。

当然ながら最初は2人に恋人同士のようならぶらぶな雰囲気は皆無。
しかも結婚に対するスタンスが違い過ぎて初夜から「本当に幸せになれるのかしら……?」という不穏な空気が流れています。

ですがご安心を。
本作のヒロインちゃん、かなりぐいぐい行くタイプ。
理想と違う結婚生活でもめげない強さがある彼女に、アンドレアスも少しずつすこしずつ惹かれていくのが分かります。

ラストトラックのベッドシーン、そして特典では最初の塩対応なアンドレアスはどこへやら、甘々な夫婦の時間を垣間見ることができます。

総再生時間も短めで、王道なラブストーリー。
疲れた時や癒されたいときにサクッと聞ける作品だと思います。

ちょっぴり意地悪で厳しくて誰よりも優しい。
そんな言葉が似合う恋人でした。

本作は「担当編集の泉井さん」「恋人の尚央さん」という2つの面が交互に見えるのが何よりの魅力だと思っています。

担当編集の泉井さんはそりゃもうしごでき人間。
担当作家のどんな些細な変化にも気づき、徹底的に寄り添い、的確なアドバイスをくれる。
作品の理解度も高く、発言の際には言葉を選んでいるのも分かる。
複数の作家を担当しているのも頷けます。

恋人の尚央さんはというと、ちょっぴり意地悪で甘々な人。
主導権は絶対に手放しません。恋人が手のひらの上でコロコロされてるのを見てニコニコしているタイプ。
自分のことを名前で呼ばないとちょっと怒るとことか、自分の手で彼女が泣いたり恥ずかしがったりしているのを見て満足気なとことか、程よいSっ気が魅力的です。

2つの面の使い分けもまたお見事。
仕事モードの時には仕事に徹し、恋人モードの時には恋人として接する。その切り替えがしっかりしている人です。なんて真面目。
でも、急にそのモードを切り替えてこちらを振り回してくる茶目っ気もあったり。こんなの沼ですよ、沼。

そんな真面目な性格はベッドシーンでも健在。
特に1回目のベッドシーン、準備していなかったからと途中までしかしないあたり大変彼女想いの素敵な彼氏さんです。そして余計にえっちです。
2回目のベッドシーンでは意地悪に拍車がかかるものの、彼女のことが大好きなのが伝わってきますし、ピロートークでの真面目で優しすぎる台詞にまたきゅんとしてしまいます。甘えちゃうよこんなの。

これからも素敵なパートナーとして人生を歩んで行ってくれそうな2人。
幸せをお裾分けしていただいた気持ちで聞ける作品でした。

人外のお兄さんにおくすりでとろとろにされちゃうお話。
一言で表すならこれに尽きます。

今作のお相手はエルフのエルノールさん。
物腰柔らかで終始敬語という丁寧な方です。
しかも、「本当に最後までやっても大丈夫か」と何度か念押ししてくれるような優しいところもあり。
「薬師として媚薬を作っており、被験者を探していた」というストーリーからは想像できないほどの紳士な方です。

一方、エルフの設定としておなじみの、「根本的に人間を見下している」みたいな性格もチラ見えしてます。
人間の話をするとき、声の纏う温度がスッと冷えるのを感じるんですよ。怖い。
「物理的に」のセリフを聞いたとき、心底怖かったです。な、何をしたんだこの男……。


そんな、人に対してあんまりいい感情を抱いていないエルノールさん。
トラック名にもある通り、ヒロインとの交流を通して少しずつ、「この子は違うのかも」という気持ちになっていくのが伝わってきます。
被験者という立場ではありますが、決して無理はしない程度に、優しく優しく、でも容赦はなく責めてもらえます。
後半に行くにつれ、その優しさが静かに、しかし確実に上がっていくのが大きな魅力です。

プレイで言うなら水音が魅力的でした。
SEの水音がえっちなのはもちろん、舐めるシーンのじゅるじゅる度合いたるや。さすが河村さんです。


ラストは文句なしのハッピーエンド。
優しいのに人間嫌いな彼だからこそ、優しくて甘い台詞の数々にキュンとすること間違いなしです。

何ともうさん臭い男と関わってしまったヒロインと、「天」と名乗る正体不明の男との不可思議な1カ月のお話です。

最初はヒロインちゃんも「このヤバい男の言いなりになるもんか」と気合を入れ、対策をしつつ臨むのですが、天くんはそのさらに上を行きます。
人を転がすのなんて日常茶飯事なのでしょう。容赦ない。


ベッドシーンが容赦なし色気爆盛なのは演者さんのお名前で言わずもがなですが、個人的に声を大にして言いたいのはその存在の自然さ。
日常パートでの話し方、呼吸の入れ方やちょっと笑いを含んだ話し方など、「こういう雰囲気の人間、確実にこの世界のどこかにはいるな」と思わされました。
他人をもてあそび、女の子を監禁してペットにして抱いて、というなんとも浮世離れした……というよりはこんな男実在しないでくれ頼むから、と言いたくなるようなキャラクターですが、その話し方を聞いているうちに浮世離れ感が薄れていくんです。
お芝居をする人ってすごいなぁ、と思わされました。


翻弄されていつの間にか男のモノにさせられちゃう、そんなシチュをお求めの方にはたいへんおすすめです。
いつの間にかからめとられて抜け出せなくなっていること間違いなしです。

罪人の子として育ったヒロインが、一目見たいと願っていたのが今作のお相手、龍神様。
ヒロインのことを新しい生贄だと思った龍神様は最初は軽くあしらいますが、なんやかんやで一緒に暮らすことに……。

そんな、少し緩めのスタートを切った本作。
やはり本作一番の魅力は「人ではない神様」として描かれる龍神様でしょう。

淡々とした口調からはあまり感情が見えない神様。
接していると、人間の心の機微に少し疎いような気がします。それでもヒロインのために少しでも優しくしてやりたいという不器用な気持ちがじんわりと伝わってくる。

もちろんベッドでは容赦なし。
毎晩、という台詞に内心舌を巻きました。流石神様だぜ……

そんな、少し不器用な彼と起こった1つの事件。
トラック4では、リスナーとして薄々と察していた事情が詳らかになります。
それに気がつけなくて、望まぬ形で暴いてしまった龍神様。その慟哭にも似た怒り、そんな彼に呼びかけるヒロイン。SEも相まって大迫力な場面でした。
だからこそ、その後のトラックで紡がれる温かさと優しさが沁みる。思わず涙しながら最後まで聞きました。

温かくて優しいハッピーエンド。
青い海と綺麗な魚と桜色に彩られた、とても綺麗な恋物語でした。

今や王道となりつつある「異世界転生モノ」。
今作もその例に漏れず、現代日本から転生してしまったヒロインと、彼女を見つけ助けてくれた永臣さんとのラブストーリーです。

適応力の高さでなんでも乗り越えていくヒロインと、それを微笑ましく眺めている永臣様。
彼がヒロインちゃんに恋をするまでそんなに時間はかからなかったようで……。


立場を利用しつつ彼女に近づく永臣さんですが、そんな彼との交流の肝は題名の通り「焦らされ」。
なかなか自分の思いに気づかない鈍感なヒロインちゃんのある状況に業を煮やした永臣様からのお仕置きえっち。これがまあ、容赦ない。
ヒロインちゃんが何を言おうがどんな反応をしようが一切自分のペースを崩さず責める責める。
高貴な立場故の余裕とマイペースさに存分に振り回されちゃってください。
けれどこれはあくまでも「愛ゆえ」。
泣き出した彼女を見てようやく頭を冷やしたり、結構真剣に反省したりする様子は素直に可愛いな、と思ってしまいました。


そんな永臣様には「ひみつごと」があり。
台詞の端々に引っかかるものがあったら、是非特典の台本で答え合わせをしてみてください。

意地悪は意地悪でも、「甘い」意地悪。
これに尽きます。


ヒロインの許嫁であるジークさん。
とにもかくにも、ヒロインちゃんのことが大好き。
目に入れても痛くないのだろうなということは想像に難くないです。
彼女と他人とでは話す声のトーンすら違うんですもの。


日常パートもベッドシーンも愛情でドロドロに溶かしてくれます。
私この人の許嫁で幸せだなぁ、と思えること間違いなしです。


とは言え、土門さんのセクシーさは健在。
甘々ではありますが、全く手加減は無いです。
やっぱり「意地悪」なのは事実です。
最後のトラックでの孕ませ宣言はなかなかギュンと来るものがありました。

ヒロインは名家のお嬢様、彼は執事。
当然ながら身分差のある恋模様が描かれる作品です。

執事のギルさんはいかにも「できる執事さん」という感じのお方。
柔らかな物腰、主人のために先回りしててきぱきと仕事をこなす姿は、おそらくほとんどの人間が抱く「執事」のイメージそのまま。
そりゃあお嬢様も好きになってしまうというものです。

ですがギルにとってお嬢様との交流はあくまで「仕事」。
たとえ彼女から告白されようが、揺らいではいけない。それが執事。


……なんて、あくまでも建前。
一人の男としての彼の想いはそうではなく。

ふとした弾みにそれを知ってしまったお嬢様と、不器用に近づいていく様子に、時にやきもき、時にキュンキュンしつつ見守らせていただきました。


ベッドシーンは本編で3回。
「手解き」と称して触れる1回目、
嫉妬と自分の立場の狭間に立たされたまま触れる2回目、
心も体も通じ合う3回目。
どのシーンもギルさんからの想いに溢れています。1作品で3度おいしい。

個人的なお気に入りは、トラック6。
今作のヒロイン、なかなか強気で可愛いんです。
どんなにギルさんに拒まれてもめげないお嬢様。そんな彼女の強さと、それを受けて優しく応えるギルとの告白シーンは是非聞いてほしいポイントです。

「うかび」と同じお相手と展開される今作。
ハッピーエンドだった「うかび」との違いは、ヒロインの縋り方から始まったようです。


ヒロインのことを「ペット」と呼び、物の如く扱う佐倉さん。
プレイ内容も場所も、全体的に背徳感漂うものになっています。

何かと言えばヒロインに「君が自分を好いているから」と繰り返す。
ペットのリードの強度を確かめるような、縋る藁の所在を確かめているような。
「君のせいだ」と言いながらもその関係に依存しているのがどちらなのか分からなくなるような感覚に包まれながら聴いていました。


何よりも印象的なのが佐倉さんの声色。
ずっとずっと優しいんです。下手をしたら、「うかび」よりもずっと。
ベッドシーンの後にヒロインを労わる声、自分の駄目さ加減を語る声、全部が甘くて優しくて、ここでなら溺れても良いかもしれない、なんて思ってしまう。


後半に起こる事件によって、本格的に2人はしずみはじめます。
教師として、表面上は今までと変わらぬ顔を見せているようですが、中身は揃ってボロボロ。
佐倉さん本人が言っているように、きっと、いつかは。
でも、そうなってしまったとしても、それは2人にとっては幸せなんだと思います。
例えどんなに深いところまで沈んでしまったとしても、2人一緒ならきっと怖くない。


特典はトラック6･7の間の時間軸です。
その順に聞くと、より2人の機微が分かると思います。
若干の暴力描写がありますので、苦手な方はお気を付けください。

優しくて穏やかで、生徒にも好かれている、そんな理想の先生。
それが佐倉先生です。

けれどその裏には過去の対人関係からくるトラウマがあり……。


最初は完全にヒロイン→佐倉先生への片想い。
それを疎ましく思っている佐倉さんはひたすら彼女を突き放そうと頑張ります。

学校ではあくまでも同じ「先生」として優しい顔を見せ、
2人きりになると徹底的に「セフレ」、時にはそれ以下の扱いをする。
なのに、どこか優しい顔が常に垣間見える。

好きなのに好きと言えない、言ってしまうのが怖い。
そんな彼の気持ちが固く閉ざされた殻の中からほんの少し見えるもどかしさ。
きっとヒロインもそのほんの少しの希望を頼りに彼の傍に居続けたのではないかと思ってしまいました。


彼のそんな気持ちが爆発するトラック6は必聴です。
「子供のように溢れて」という言葉がピッタリ。
彼のトラウマも心情も飛び越えて、不器用に、縋るように、それでもまっすぐに紡がれる言葉にぐっと来ました。
こんなに掴まれる告白シーンは初めてかもしれません。


最終トラックでは何とも幸せそうな2人の姿が。
そのまま、2人が、佐倉さんが過去を乗り越えて幸せな生活を送ってくれることを祈っています。