このストーリーは、ヒロインの感情や婚約者との関係が読み取りにくくなっている上に、ラストも含みを持たせた終わり方なのですが、私は耀司くんからドロドロの情熱と深い執着を言葉と身体に思いっきり焼き付けられて…さぁヒロインのあなたはどうする??と選択委ねる巧妙な仕掛けだと受け取りました。
視聴後にも耀司くんの熱さが残り、その余韻に頭が支配されヒロインも彼を拒めないのは必須ですね。
とにかく終始ヒロインの返事は曖昧に耀司くんに流されまくるのですが、流されるのは当然とばかりに声優さんがめちゃくちゃ魅力的な岡崎耀司くんを演じているので、それも納得しちゃうんですよね。
車内での行為のシーンでは普段寡黙な耀司くんがどれだけヒロインの事が好きで好きで、ずっとずーっと手に入れたいと思っていたのか、キスの間に漏れる興奮を隠せない荒い息づかいや喉から搾り出すような低音の台詞から嫌というほど分からされます。密室の中、耳元で注がれる吐息と、時折耳に入る車外の遠い蝉の声がよい演出となり汗ばむ身体だけではなく、脳までトロトロに溶けてしまいそうな…夏がテーマのこの作品にぴたりとハマってとても素敵なシーンです。
短いストーリーの中でも、序盤の重い雰囲気の耀司くんと、前向きなヒロインに許され感化され10年間抱えていた罪の意識や葛藤が解放された最後のトラックでの晴々しい笑顔の耀司くんへの変化も丁寧に描かれています。また、最後の「いつでもここでお前を待ってる」という台詞は婚約者との新たな三角関係を示唆し切なさを感じつつも、もう10年前の過ちは繰り返さないという耀司くんのものすごい覚悟と執着心を表してて良かったです。
CVの恋津田さんの作品は何作か聴かせて頂いていますが、全編を通してここまで感情を細かく巧妙に演じられた作品は初めて聴いたので、その優れた表現力に改めて素晴らしい声優さんだなと感じました。今後のご活躍も楽しみです。