当主としての選択は正しかったが清い愛情を持ち合わせなかった正。清い愛を持ち過ぎたが故に正しくない選択をしてしまった清。そんな双子の狭間で、毒とも蜜ともとれる水やりという行為によって、花生みの記憶や感情が揺さぶられていきます。
本来、花食みが満たしてやる水やりに至っては、男根を擦り付け奥深く貫きたがる清にとっても、渇いた愛を吸い上げる行為に思える切ない片道の情交でした。
耳元での甘い囁きに弱い事を意識してか無自覚か「もっとお前が欲しい」「俺で満たしたい」と耳を舐め上げ啄む前戯は、彼女が心から快楽を得るには難しいながら、台詞の合間の吐息や舌使いの隅々に愛おしさや切なさが息吹いており、胸が締め付けられ、こちらが早々に耳と心を傾けてしまいました…笑
正の体調を気遣って花を生み、正を思い出して涙から花を生む。T5でも再び涙から花を生みだし、清は非常に戸惑います。また正を思い出して涙の花を流したのではないのかと。それでも自分は彼女を手放すことは出来ないのだと。この花生みは、正の苦しそうな体調への労りから生まれた花の記憶、正が好きだと涙した花生みの感情の記憶、それらが目の前の苦しそうな清へシンクロし花生みが起こったのだろうと思えます。ただ、最初の花生み描写が明確でないことを鑑み、混濁した中で起こした一方通行の花生みではないのでは?と縋りたいのが本音です…苦笑。
清の言動で正の言葉が蘇り、花蝕を促す引き金になる演出やボイスオーバーの様な加工も際立ちました。
「愛してる、愛してる」という清の声しか響かない言葉は届いたのでしょうか…いつか届いてほしい。
もう一つの結末は、やはりそこへ辿り着いてしまったか…と納得でした。双葉から育った二つの枝が一つの枝と新しい芽を生かす為、片方を剪定した彼の選択に、胸を抉られるような切なさと身を切るような愛情が染み渡りました。
世界観溢れる素敵な作品をありがとうございました。