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幕末を経て訪れた新時代にも、日本を憂う志士が居た——。
明治11年。剣心たちが京都の戦い、人誅の戦いを経た直後の、夏の終わりのひとつの物語。
ある日、街で薫のことを訊ね回っていたという洋装の男の目撃情報が話題に上る。
その男は、かつて神○道場の師範代であった青年で、西南戦争を神○越路郎と共に戦った者であると判明した。
薫とその青年の再会から全ては始まる。
迷走を始める明治という時代の中で、少女は戦い続けていく男達とともに新時代を生き抜く覚悟を新たに誓う。
光の中の、あのひとを見ていた。
眩しく笑い、強くて優しいあのひとは、
少女ながらに男よりも剣を愛し、腕を磨き、誇りを持ち。
まっすぐに美しく成長していった。
ほのかな、憧れ。
たいせつに想う、気持ち。
近くて、遠い——手の届かぬ存在だと思っていた。
武士たるもの、斃れて後、已む。
剣を手にした以上、戦いに散ることが志士たるものの行く末。
後ろを振り返ることは許されない。
戦い続けるからこそ、想いは告げられないと思っていた。
遺されるものの悲しみと絶望を思えばこそ。
だから——。
ながいながい間、大切に育ててきた淡い想いは、心の奥底にしまった。
——志ひとつ胸に。生きてゆこうと。