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大魔女カーラ・ウィンストンが死んだ。
大戦の英雄として畏怖と尊敬を一身に集めた最強の魔女、カーラ・ウィンストンが。
晩年彼女が過ごした養老院を訪れた記者は、生前のカーラと親しくしていた婦長にインタビューを申し込むが、彼女の口から語られるのはカーラの意外な素顔だった。
未亡人の婦長と見た目美少女な大魔女の友情ストーリー。
作者Twitterアカウント @wKoxaUr47xGeAZy
(作品の裏話や情報を更新しています)
「ここが私の部屋?カヤネズミの巣みたい」
自分の部屋に導かれたカーラ・ウィンストンは開口一番不満をもらし、婦長のジル・カステルを睨み付ける。
「この養老院で一番いい部屋は?」
「ありません。広さと造りは全部同じです。せいぜい日の光を取り入れる窓の位置が異なる程度です」
「なにそれ、せっかく高いおカネを払って入園したのに詐欺じゃない」
車椅子にかけたカーラが憮然と腕を組む。
魔女が晩年を過ごす養老院にあって、せいぜい十代半ばの華奢な少女にしか見えない彼女の容姿は異彩を放っていた。
ジルは温和な笑みを浮かべ、わがままな入居者に教え諭す。
「ここは国営です。いくら多額の寄付をいただいても、それを基準に特別扱いはしませんわ。当園に来たからにはルールに慣れていただかないと」
「よく言うわ、ただの姥捨て小屋じゃない」
燐の炎のような緑の目に嫌悪が滾る。
「さんざん私たちをこき使っといて、絶滅寸前になったら突然人道に目覚めて、おままごとの延長の姥捨ての園を用意するなんて。国って勝手なもんね」
「そして私がこの姥捨ての園の婦長です」
「さしずめ白衣の魔女ってトコね」
蓮っ葉な口調で皮肉り、車椅子の車輪を器用に回して部屋中を検める。
部屋の壁に沿って車椅子を動かしていたカーラが、眦を吊り上げて唐突に顔を上げる。
「何よ、じろじろ。この姿が珍しい?」
「ええ……いえ。それも勿論ありますけれど、お話にうかがってたより随分元気そうなので驚きました」
「ふん。中身はボロボロよ」
車椅子のカーラが胸を張る。
いばることではない。
「あの噂は本当なんですね……」
「むかあしむかあし大魔女カーラ・ウィンストンは兵器として駆り出された戦場で不老の呪いをかけられ、以降ちっとも老いなくなりました。死ぬまで若く儚く美しい少女のまま、皆からバケモノ扱いされて孤独に老いていく運命を背負わされてしまったのです。ああ、なんていう悲劇!」
澄んだ声音で囀るカーラの姿は、必要以上に悪ぶっているようにも、または自分に酔っているようにも見えて滑稽だ。
大仰な手振りで宣言し、挑戦的な腕組みで婦長を睨む。
「ご満足いただけて?無償にしては面白い見世物でしょ、なんならもっと近くによって見てもいいのよ、お肌の張りと潤いは十代の頃まんまなんだから」
「お言葉に甘えて」
「えっ」
まさか乗って来るとは思わなかったカーラが車輪を掴んで引くが、構わず歩み寄って覗き込む。
「本当、毛穴が見当たらない位綺麗な肌ですわね」