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「Sweet Bug~アンドロイドの涙~」 へのレビュー
2023年05月31日 鞠緒 さん
このレビューは参考になった x 56人
「永遠」とはなんなのだろう。 心が締め付けられるように。 そして焼け付くような思いで掻き乱されながら。 頭の片隅でそんな答えを探しながら聴いた作品でした。 まずハッとさせられたのは、バグを取り込んだ瞬間に切り替わるルークの口調。 無機質だった「機械」から一気に感情というものを彷彿させる温かみを帯びた事に、感動すら覚えました。 一人称も私から俺へ。 まるで自我を持つ一人の「ヒト」として、プログラムでは測りきれない感情をその身に宿していくルークの姿。 博士への気持ちが創造主である神から一人の愛する女性へと変化し、その想いを真っ直ぐに伝えてくれる彼を愛さない理由なんてないんだよね。 博士とアンドロイドではなく恋人として一緒に過ごす時間は、とても甘く、擽ったいぐらいに優しくて。 けれどそんな二人だけの幸せな世界に、無情にも生じていく歪。 ルークは決して善悪というものがわからなかったわけではないと思うんだ。 ただ何よりも、愛する人を守りたかった。 それだけなんだよね。 初期化はその存在、そのヒトを殺めるのと同じである。 そう彼に説いた張本人だからこその決断は、残酷だけれど、彼への愛に満ち溢れたその人にしか出来ないものなのだと思いました。 あの「ごめんなさい」に一体どれだけの想いが込められていたのか。 まるで「彼」という存在が消え去っていく瞬間を表すかのような、指輪の滑り落ちていく音があまりにも切なかったし、やりきれなかった。 そして原点回帰とも言える、日常に戻ってきたのかな?とふと勘違いしてしまいそうなまでの穏やかな時間。 けれどそこにあるのは、決して今までの思い出を、想いを全て初期化されたわけではない「彼」が存在していたのだという証。 たくさんの哀慕とも言える傷痕と、愛慕とも言える大切ものをその身と心に深く刻みつけながら。 思い描いていた理想の未来とは違うのかもしれないけれど、確かな「永遠」がそこにはありました。
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