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「藤谷さんの寵愛お世話に溺れるまで」 へのレビュー

オススメ! 「おかえり」と「ただいま」

2023年08月12日   鞠緒 さん

このレビューは参考になった x 177人

周囲から無遠慮に浴びせられる妬みや好奇の目。
そんな状況に耐えきれず「身の丈に合わない」と身を引いたはずの恋。
それなのに、再び自分の目の前に現れ変わらぬ笑顔で微笑みかけてくる、元恋人である上司の藤谷さん。

一見好青年に見える彼の、千穂ちゃんへ対する底知れない執着。
その真っ黒で不穏さを帯びていている部分が垣間みえる度に、背筋をゾワゾワとさせられます。

ただただ溺愛され甲斐甲斐しくお世話され愛し尽くされているようで、日常生活も、快楽も、匂いですら、まるごと全て藤谷さん好みに管理されて雁字搦めにされてしまっているんだよね。
こちらの作家さんの作品は商業でも拝読させていただいているのですが、濃密な性描写はもとより、自らが知り得ない彼女の一面に遭遇した瞬間の感情と共に空気をもピリつかせるような細やかな心理描写が、やはりお上手だなと思いました。

見知らぬ地方の土地、同じ時と空間を過ごしても以前よりは周りの目を気にしなくても良い環境で、結果的に再びその手を掴まれ、気が付けば彼なしでは生きていけない箱庭に囲われて。
初めから緻密に計算され尽くされたルートだったのか、意図せず舞い込んだ運命とも言える甘い罠に吸い寄せられてしまったのか…

「逃げらられない」
「逃さない」

そんなあるのかないのかわからない双方の思惑の裏の裏まで深読みし、執着というものの真髄を味わいゾクゾクさせてくれる最高の作品でした。

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