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「マリア様になれなかった。」 へのレビュー

オススメ! ★★★ねこかんダークネス★★★

2023年06月29日   TUKUNE さん

このレビューは参考になった x 3人

商業・同人二正面で活発な執筆活動を展開している作家さん。
彗星衝突を前にした、何もかもが壊れて終わる世界で、ある清廉な少女の高潔な心もまた崩れ壊れて性の快楽に屈する様を描いた、ビターな終末の寸景です。

もう暴動と破壊の激情も過ぎ去って、人々は静かに終わりの刻を待っています。
誰もいなくなった全寮制ミッションスクール。学校に一人居残っている少女は、心無い人々に壊された付属の教会を掃除して、慕っていた神父の帰りを待っています。しかし、やって来たのは彼女と因縁のある、素行不良の男子学生君。

少女は、ミッションの孤○院からこの学校に上がった純粋培養。尊敬する神父と神様とその教えを信じて疑いもせず、在りし日の学校では監督生を務めていました。
人間の裏の顔を覗いた類の経験を窺わせる、鈍く沈んだ眼をした気儘な少年。彼の生活指導を依頼された彼女とは、一時期頻繁に顔を合わせ言葉を交わし、ちょっと相互理解と信用も生まれたかのような間柄だったのですが、彼の神父への暴行(★)をきっかけに、関係は疎遠になっていました。

他に誰もいない学校、窓が全て割られた教会、ストーリーを下支えする情景。曖昧な、叶わないと薄々分かっている希望に縋る彼女の危うい佇い☆
そして暴かれる、信じていた物の正体。心の支えを全て失った少女は、待ち構えている少年に、その身を投げ出すのでした。

十●架像が奉られている壊れた教会で繰り広げられる悖徳の性戯。この行為に心は無く経験も無いのに、いとも簡単に感じて跳ね踊ってしまう身体。彼女の淫らな本性を暴き説き聞かせる、男の悪魔的な口説。神様に相応しい高潔を目指していたのに、呆気ない肉の裏切りに泣く彼女の心のような、潤み崩れた瞳。少女漫画系の絵柄で写される、快楽に流される肢体と心情からは強烈なあぶな絵感が醸し出されます☆

高潔と堕落の落差はそれが大きい程味わい深いものです★
期待を裏切らない哀切の闇堕ち譚☆☆

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