深淵探求さんのレビュー一覧
レビュアーランキング | 78位 | (役に立った数:902件) |
---|---|---|
投稿数ランキング | - | (総レビュー数:100件) |
今まで個人的な経験で言うと、女性向けは男性向けに比べて設定や脚本の出来が「浅い」傾向があります。女性向けは大体エロだろうが非エロだろうが恋愛や結婚を題材にしているし、物語上の事件も登場人物たちの気持ちの変化などでアッサリ解決してしまうことが多いからです。その結果、女性向けというジャンル自体がかなり単純で浅いジャンルになっていると個人的に感じてました。だけど、本作は例外です!
嬉しいことに、本作は設定も脚本も登場人物たちの気持ちの変化でアッサリ片づけられちまうような作り方はしていません。物語の主導権はあくまでも主人公たちの気持ちとは無関係の「蜂須賀家の呪い」にあって、主人公たちはあくまでもそれに対応する形で物語が進んでいきます。女性向けの作品で共通的に見られる「全てがヒロインを中心に回っている」感がこの作品にはないということです。むしろどっちかと言うと本作でヒロインは良い意味でも悪い意味でも呪いに振り回されっぱなしです。(笑)
もちろん、物語に矛盾点や穴が一切ないという訳ではありません。詳しくは語りませんが、途中でかなり重要な問題になる「神饌の儀の周期」のことがそれまで全く説明されてないことがかなり痛いですね。「あれ?なんでそれ今更問題になるの?今まではこんなことなかったの?あんな色々対策してる家で?そう言えばこの儀式ってどれほどの周期で行われてるの?説明ないんだけど。」という疑問が沸くところです。
しかしそれ以外はそこまで目立つ問題はございません。作者さんが絵のみならず物語にも相当熱心に情熱を注いでらっしゃていたことが分かるところですね。性愛描写を含む絵はもちろんのこと、物語まで類稀なクオリティーで仕上がっている名作です。自信持ってお勧めします。
追加漫画の要請:二人が年を取っても仲良しなところを二人の成長した子供の視点から観察する話をどうかお願いします!両親としての二人が見たい!
2024年08月18日
遂に終わりを迎えました。オメガバース世界観での純愛物語が。長いと言えば長くて短いと言えば短かったんですが、遂に最終話がここに出てしまいました。
内容は流石に最終話だからか、急激な盛り上がりがあったりはしないんですが、落ち着いていながらも回収すべき伏線はちゃんと回収するって感じでしっかりした展開になっています。少し惜しいところがあるとすれば夫のお父さんが思った以上に話が分かる人だったので特別な事件とか起きることなく話が丸く収まったってところですかね。正直何か起こるだろうと思っていたんで残念でした。
それ以外は二人の妊活、育児、成長した子供たちとの日常などがありますが、これらは元々何か事件が起きうる題材じゃないので普通に平和で、普通に癒される内容になってます。特に評価したいのは主役二人が中年夫婦になったところを描写しているところですかね。
大体の女性向け作品は主役たちの若い時だけに集中してとりあえず外見的に華やかで美しい時期だけを取り上げたがる傾向があるんですが、本作は主役二人の愛がちゃんと家庭という形で実って幸せになったところまで描写してくれてます。年を取って若さを失いつつあってもそれを代償にしてちゃんと家庭を築くことができた二人の姿は見てて凄く心が満たされたので何度も読み返したいところです。できれば二人が子供たちにとってどんな親だったのかも見てみたかったんですが、それは尺の都合か出てません。
もっと掘り下げて欲しい題材が掘り下げず終わってしまったのは残念でしたが、シリーズの最終話として話を綺麗にまとめることを優先した結果だとすれば納得はできるクオリティーです。実際、主役二人が家庭を築くために乗り越えるべき物は全部乗り越え切りましたから。短編作品だったら疑問が残る出来ですが、シリーズの最終話としては充分です。
今までシリーズを楽しんでくれた方々なら楽しく読める一作だと思います。
恋人の間の純愛を求める方々には微妙な要素が多いですが、理想のご主人様に徹底的に手懐けされて徹底的に従属する側になり甘々な感じで可愛がられたいと想うマゾ性癖のある方々には自信もってお勧めできる作品です。
この作品が純愛ではなくSM物だと思った理由は色々あるんですが、一番大きかったのが主役二人が個人と個人として接しているというよりはそれぞれが大勢のフォロワーたちを率いている裏垢界の上流市民同士として接していると感じたからです。両者共に裏垢界で君臨する側の人間で、その二人が首脳会談って感じで駆け引きをしてる謎の緊張感が作品の冒頭部を占めています。
だけど、それは本当に冒頭部だけの話。作品情報で分かる通り、これはヒロインのひなちゃんが徹底的に堕とされるための布石でしかありません。俗に言う「上げて落とす」テクニックですね。この落差がかなり激しい上に、その過程も無理やり力でねじ伏せられる訳ではなく、トロトロで甘々に抵抗する意志を溶かされてしまうんです。正にマゾ女の夢見る堕ち方そのものです。
その結果、ひなちゃんは君臨する側から従属する側に回り、その時点まで募っていたフォロワーたちも失いますが、相手役のともちは以前と変わらず裏垢界の上流市民としての生活を続けます。ひなちゃんはともちに愛される女たちに仲間入れしてともちの「戦利品」になりますが、ともちは何一つ失わず、しかもひなちゃんは自分の過去などを明かしているのにともちは何一つ自分のことを言いません。正に「絶対的覇者」としての風格を維持します。本作が純愛と呼べない理由がここにあります。マゾ女には最高ですが恋する乙女には不向きの内容ですからね。
|
2024年07月07日
音声作品は音声だけでしか表現できない都合上、余り世界観重視のエロスは求めづらい形式です。だけど本作はその形式の限界に果たし状を出している作品です。僕は普段から世界観から入るエロスは正義だと思っているので、買わせていただきました。他にも世界観がちゃんとした音声作品を試してみたい方には良い作品になると思います。
ただ、音声作品の都合上、作中でオペレーター役の人がずっと解説する形になっているのでエロスを世界観より重視する方には少し微妙かも知れません。「エロスと世界観、どっちも大事だけどどっちか選ぶんなら世界観の方をもっと重点的に楽しみたい」という方にだけお勧めします。
レビュアーが選んだジャンル
|
2024年06月16日
ストーリーから作画まで何もかもが野生じみている作品です。特にヒロインは設定上学生ってことになっていますが、どう見てもあの身体は成人女性のトップモデル並みかそれ以上の品質を誇っています。あんな肉付きであんな若さだとそりゃ寝取られるって頷くしかないほどです。実際、作中では間男以外にもヒロインを寝取ろうとする同級生たちが出てきます。間男に優先されてカヤの外って扱いですが。彼氏君がどれだけ格下に思われているかが伺える場面だと思います。
ただ、この作品に一つ問題があるとすれば、ストーリーがもっとありそうなのに掘り下げずじまいってことです。野生じみた内容に反して主役キャラクターたちにそれぞれ動物としてではなく人間としての個性と関係性を与えているにも関わらず、伏線くらいのレベルにしか取り扱ってません。特に後半はそういう人間性が何の前触れもなく丸ごと消滅しています。
男性向けの作品が女性向けの作品より動物じみた関係を取り扱う傾向があるのは周知の上ですが、前半であんな良い感じに拗れた人間関係とか色々と良い素材が出てたのにそれを活かさないのはどうかと思います。時系列的にも過去と今、もっと前の過去と今を行ったり来たりする構成になっていて少々雑な構成だと思わずにはいられませんでした。
あとがきの内容によると、この作品は元々8pくらいの漫画でしたが、どんどん内容が膨れ上がってしまって出来上がったものらしいです。構成が雑なのも、キャラ作りが中途半端なのも多分このせいでしょう。
ただ、その分、NTRの破壊的な美学は極めています。女性向けだったら天が割れても描写できないだろうくらいに人間関係の破壊が赤裸々に描かれているのでそういう美学を高いクオリティーの作画で見てみたい方には断然お勧めできる作品です。ある意味、女性向けでは決して取り扱えない男性向け固有の美学を極めた作品だと評価できますので、好みの合う方なら是非。
男性向けとか女性向けとかそんなくだらない枠組みなんてどうでもよくなる作品です。作者さんは「女性向けで出しましたー!」って仰ってますが、この作品、普通に男性向けとしても上の上と言っていいほどクオリティー高いです。性別問わず誰にでも売れます。
作者さんの作品は他にも色々読んでいるんですが、多分作者さんは「性交渉の主導権を女性が握っていると男性向け、男性が握っていると女性向け」だと思ってらっしゃると思います。それしか違いが分からないほど、男性向けだろうが女性向けだろうがちゃんと作者さんのスタイルを貫いてらっしゃいます。
作画のクオリティーはもちろんのこと、男性キャラも女性キャラもどっちも粗末に扱うことなくちゃんとキャラ作りしてくださるのと激しい性交渉にかなりの執着をお持ちなのにも関わらずストーリーにもちゃんと力を入れていること…全て作者さんの他の作品でも見られる一貫した玉ぼんスタイルです。本作が気に入った方は作者さんの他の作品もお勧めします。男性向けでは少々変態行為が混じっているんですが、エロシーン以外の内容は本作が好きな女性なら充分楽しめるはずです。
作者さんの他の作品に比べて本作で目立つ特徴があるとするとやはり長編ならではの主役カップルの心理描写です。最初は「エロい娘が身体で男を墜とす話なのかな?」と思いましたけど、二人とも互いに惚れた理由がどっちも納得できるものだったので歓喜せざるを得なかったです。「尊い」とはまさにこのことです。
男性向けも女性向けも大体どっちかに偏るご都合主義が取り入れられる傾向がありますが、本作ではそういうご都合主義など全く見当たりません。物語の作り具合が完璧です。起承転結のどの段階も非の打ち所がございません。ページ数をもう少し足してすれ違うところをもっと細かく描写してほしいという欲はあるんですが、今のままでも充分傑作です。
自信持ってお勧め致します。
2024年05月20日
最初から最後まで綺麗な作品です。作画だけの話ではなくて物語の展開も「さすがに綺麗すぎ」って思うほど綺麗です。セフレという爛れた生活を思わせる題材を取り上げていますが、本作での描写上はその爛れた感覚が全く感じ取れません。そもそもセフレになった切っ掛けもお互い都合の良い性処理相手が必要だったって訳ではなく、「慰めたい」、「慰められたい」という気持ちが暴走した事故って感じです。その分、この作品は徹底的に純愛に走っている作品なので「セフレ」というタイトルから性欲旺盛な男女の話を期待した方は少しガッカリするかもです。
だけど性愛描写だけは「セフレ」をタイトルに入れている分、エロに充実した描写になっています。男性向け作品でよく出てくる定点カメラ構図で藤堂君に犯されまくる寧々ちゃんの姿はエロ以外の何物でもありませんでした。ただ、やはり女性向けなのでもっと過激になっても良いところの性愛描写が加減されている感じが強いです。純愛重視のストーリーを溶け込ませるためだったかも知れませんが、全体的に性愛描写から「力」を感じられないのは少々残念でした。
それと、現実味のある大人の恋愛を目指していたらしく、恋心とか失恋とか片思いとかそういう情緒的な描写に日常感を持たせています。いきなり感情が爆発して自分の世間体を自分がぶっ壊すような劇的な描写は皆無ってことです。登場する人物みんな自分の気持ちに正直ですが、その表現方法がちゃんと社会人としての規範を遵守しているって感じです。だから何もかも感情任せで劇的な展開に持ち込むようなキャラはおりません。そういう劇的な作品に比べるとどっちかと言えば「静か」とまで思える落ち着いた描写が続きます。
タイトルの「セフレ」に惹かれた方には少々お勧め難いものの、「純愛」に惹かれた方には自信もってお勧めできる作品です。特に現実味のある描写を好むなら尚更そうです。
|
2024年04月29日
終始一貫、タイトル通りの、そして作品紹介通りの内容です。狼少女は自分が望む相手との未来を守るため抵抗の意志を示し続けるのですが、余りにも無力な立場であるが故に何もできず自分勝手な調教師たちに躾けられ続けます。余りにも理不尽で、余りにも非力な状況で何とか精神だけは保とうとするものの、それも徐々に限界を迎えます。読んでいると調教師たちが勝手に狼少女の生態について決めつけたりして狼少女の尊厳までも蹂躙されるところが何というか...かなり現実味があります。現実でも立場の弱い人って上の者の評価通りの人間だと決めつけられがちですから。色んな意味でゾッとさせられる作品でした。
内容自体はストレートだし、作画はさっぱりしてるし、購入して損する作品ではありません。ヒロインも絶望してもおかしくない状況でもかなり粘るので色々好感が持てるタイプです。ただ、その分、即落ち展開などを期待している方にはお勧めできません。本作のヒロインはかなり精神力が強いタイプなので、似たようなジャンルの作品のヒロインたちのようにすぐ堕ちる展開を望む方々はガッカリするかもです。もちろん、強いヒロインをお求めの方々にはお勧めできます。
本作はターゲット層がはっきりしている作品です。自己肯定感が平均以下だけど、社会人としての道徳観念は強い、でもそのせいで自分の欲望に素直になれない全国の真面目陰キャ女子たちがそれです。後はそういう人物像に女子力の高い身体を与えてヒロインを作り、またそういうヒロインを高く評価してくれてセックスも上手くて業務能力も高い先輩を相手役としてくっ付けます。すると、じゃじゃじゃーん! 真面目陰キャ女子の夢が何でも叶っちゃう世界線の完成です!
物語的にも起承転結が整っていて基本に忠実な物語だと感じました。ヒロインがグラビアアイドル級のプロポーションを持っているのにも関わらず陰キャすぎるところが時々気に障ったりはしましたが、ヒロインが物語を引っ張る力に欠けている分、パートナーであるヒロインの先輩が力強く物語を引っ張ってくれるので許容範囲内でした。ヒロインも作品も、色々とパートナー役の男性キャラの度量に救われてます。
性愛描写も女子が夢見るシチュを的確に狙った内容でした。片思いの相手に自分の身体の価値を認められた上で欲情の対象になり、優しく、だけど力強く貪られるのは少し性欲の強い女子なら誰でも夢見る最高の性愛経験じゃないでしょうか。マゾっ気があるなら尚更のことです。それでいて、アフターケアも完璧。やり捨てなんて野蛮な仕打ちは以ての外。女子の夢見る理想の性経験に、理想の恋人像だと言えます。
ただ...そうですね。男性キャラクターをSだと評価するにはちょっと行為内容が温いってところがありますね。便宜上二人の関係をSMカップルとは言っているものの、それはあくまでも二人の人格的な相性の話で、性行為の内容の話じゃありません。その点、相手役はSと言うより「男前」と言った方がもっとしっくり来る性格をしてます。責任感強いけど、良い「女」には強い所有欲を見せる、的な性格だと言えば分かりやすいでしょうかね。
前作は二人の馴れ初めが主題でしたが、本作は恋仲の維持が主題となっています。その分、真面目陰キャ女子であるヒロインの負のエネルギーが物語を引っ張っていて、前作で相手役が物語を引っ張っていたこととは真逆の構成になっています。そのせいで前作は全体的に希望的な描写と展開になっていましたが、本作は絶望までは行かないものの、かなり背徳的な雰囲気の作品になりました。ただ、この場合「背徳」と言うのは二人がお互いのことを「男女」としてではなく「雄と雌」として求め合い始めると言う意味であって、結果的に二人の関係は大きく進展します。要するに、もっと露骨的にイチャつくってことです。
前作では少なからず二人の間にあった「社会人としての規範」がどんどん薄くなって二人が個人と個人として、雄と雌として向き合うことでお互いとの距離がどんどん縮まっていく様を見ていると「この二人、もうちょっとで家庭作りそうだな」って雰囲気を読み取れます。二人の男女が社会的規範を超越して一つに結ばれた瞬間家庭が生まれるんですから、こういう展開は極めて自然の摂理に沿った内容だと思います。その分、作品全体から野性の感覚が感じ取れます。
サラリーマンだらけの現代ものなのに、野蛮になることなく、純粋だと言って良いほど野性的になっていく二人の関係は、ある意味男女の交わりの本来あるべき姿を表しているとも言えます。脇役の方々もスーツ着ているだけで挙動はかなり動物じみてます(草)。
性愛描写と行為内容は二人がお互いの性癖をより深く理解したことによって前作よりはハードになっています。さすがに男性向けのエロ漫画みたいに「暴力的なまでにハード」にはなっていないしなって欲しくもないんですが、そこそこハードな男性向け作品に負けないほどハードです。つまり、女性向け作品の中だと上の中くらいはハードってことです。マゾ性癖がない方はちょっとビックリするかもです。