これは、まさにその寿命が尽きようとする日に出会ってしまった運命の人を地上に繋ぎとめるべく、天命に逆らうため、知も身も心も捧げ尽くした鷹司将の、10年間の愛と闘いの記録であるーーーー。
とまあ、昭和に敬意を表して往年の大映ドラマっぽくまとめてみましたが。
「溺愛監禁」シリーズですし、あの二人の父親!ってことで、覚悟を決めて購入しました。痛いのも無理やりも苦手族なので。
けど。
そこにあったのは、ほんとうにうつくしく悲しい、愛と受容の10年でした。素晴らしいレビューがいくつも上がっているのですが、私も蛇足ながら少しだけ。
鷹司パパが息子二人と違うのは、ヒロインちゃんの話を聞くところ。すべてを受け入れ、望みをかなえようとしたところ。だって無理やりが一回もない。狂気もない。
トラック4や7あたりは確かに小さいころから別々に暮らしていた〇供には、大事な母親を監禁して衰弱死させた非道な父親にも、人目に触れさせることさえ拒むほど妻を溺愛した父親にも見えるだろうなと思いました。
でも、そうじゃないんですよね。「運命の人」のすべてを、最後は死さえも受け入れる、深い深い愛が、将にはあったのですよね。あそこまで医療が介入していたら、栄養剤の注入などで体だけ生かしておくことも不可能じゃない。でも、さまざまな「美味しいもの」をとれなくなった時点で将は、彼女の最期の望みをかなえることに決めたのかもしれないです。それもまた、覚悟の上の愛としか言えない。ヒロインちゃんも、苦しみの中でいのち尽きるまでそれに応えた。愛の交歓です。
‥‥‥なーんでそれが、息子たちに伝わらなかったのかなあ。
フリトで茶介さんが、予想外の台詞に気持ちが乗ったとおっしゃっていて、それが遺書のあの文章なら、鷹司パパ、父親としても最善を尽くすと思うんですよね。結局、「昭和の父親」にしかなれなかったのかなあ。
そこが、すっごく気になっています。