zofiaさんのレビュー一覧
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気鋭のサークル、Looneyさんの新作ということで、発売をずっと楽しみにしておりました。
全編を通して、「音の透明感」を味わう作品だと感じます。
南の島を舞台にした作品ということで、少し遠くに聞こえる波音、そして砂浜に降り、海水に脚を浸しながら、そこここを打つ波が立てる音、そして惹かれ合う二人をひととき閉じ込めてくれるような雨音。
こうした美しい自然の水の音が、主人公たちに寄り添い続け、その音の世界にいるうちに、透明な水の中に心が溶けていくような、洗い流されていくような心地がします。
一方でLooneyさんらしく、心に強い印象を残すような、シンプルでありながら力のある言葉が胸を締めつける瞬間もあり、それらが透き通った世界の中の鮮烈な色として浮かび上がって、大変魅力的なところでもあります。
(どの場面のどのような台詞か、ぜひご自身でお確かめ頂ければと思います。)
切なさ、もどかしさ、狂おしさ、慕わしさ……そうした感情の交感ののちに、最後まで作品を聞き終えられたとき、纏わりついていたものを脱ぎ捨てたように、軽くなった心に出会えることと思います。
日々を懸命に生きていく内に、いつしか重たいものを引きずるような感覚をおぼえ、息苦しくなっていく……
そんな、頑張りすぎて疲れてしまっていらっしゃる女性、悩みや迷いを抱えておいでの女性に、お聞きになって頂きたいです。
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お一人でも多くの方がこの作品を体験してくださることを願って、初めてレビューを投稿致します。
ご購入を迷っておいでの方が、どうか思い切ってこの世界に飛び込んで下さいますように。
【音響】
「彼が今、まさにそこにいる。すぐそこで息をしている」と、頭でなく身体で感じさせるような、凄みのある音です。
【シナリオ】
「心地よく怯えさせてくれる」のが大きな魅力だと感じています。
一秒後に何が起こるか分からない、はらはらする感覚を是非味わって下さい。
日常生活では味わえないようなスリルが、強烈なリアリティをもって流れ込み、終わることなく突き落とされていくような心地にしてくれる……それでいて、もちろんフィクションの世界ですから、受け手の身の安全が脅かされることは当然ありません。
支配・被支配の感覚を、身の危険なく、しかしこの上なくリアルに感じられるシナリオです。
内容が恐ろしそうで心配だとご購入を迷っていらっしゃる方には、「実際の危険は無いのだし、どうしても無理だと思えば再生を止めればいいのだから」とお考え頂けたらと思います。
【演技】
市原聖という主人公の持つ、甘さ、冷たい鋭さ、恐ろしさ、底知れなさ。幾つもの表情を、前触れなく行きつ戻りつする不安定なパーソナリティを、美しく魅力的に表現して下さった演技は、まさに「怪演」と呼ぶにふさわしく、言葉にすることの叶わないほどに素晴らしいです。
【キャラクター/ストーリー】
男性主人公は勿論、ヒロインも魅力的な女性だと感じられたことが、強く心を掴んでくれました。美しく聡明で、凛々しく、使命感に溢れる女性……そんな「先生」が、追い詰めるべき相手である市原聖に心身を追い詰められていく姿が、息を呑むほど美しいと感じます。
そして考えを巡らせるほどに疑問と発見をもたらす、程よい余白を持ったストーリーも素晴らしい。成人向けの要素だけでなく「物語」を求める方もご満足なさることと思います。