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서클명 | 螺旋の月 |
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판매일 | 2020년 12월 27일 |
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시리즈명 | 暁月夜譚 |
커플링 | |
저자 | 飛牙マサラ |
일러스트 | 石神たまき |
연령 지정 |
전연령
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작품 형식 | |
파일 형식 | |
기타 | |
대응 언어 | |
장르 | |
파일 용량 |
85.23MB
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- (548.51KB)
작품 내용
まほろばの蝶 壱ノ巻1
蝶屋敷に冨○義勇が足を運んだその日、仏壇に静かに花を手向け、合掌する彼の姿があった。
「有り難うございます」
「……いや」
栗○落カナヲの方へ向き直り、義勇は切り出した。
「……栗○落に頼みがある」
「頼み、ですか」
「胡蝶の鍔と一緒に置いて貰えないだろうか」
スッとカナヲの方へと己の鍔を置く。
あの決戦の際に義勇の刀は折れてしまったが、決戦後に無限城跡から隠たちが彼の刀を探し出して渡してくれたのだ。刀は当然使い物にはならず、義勇は鍔だけを残して一先ず手元に置くことにした。
そして鬼がいぬ今、これがもう刀の一部となることはないだろうが、これをせめて彼女の傍に置いて欲しいと願い、懐に忍ばせて此処まで持ってきたのである。
彼の様子を目を細めて眺め、少女は静かに義勇の方へと鍔を戻しながら言った。
「……ここにし○ぶ姉さんの鍔を置くよりは水柱様が持っていて下さった方が姉さんも喜ぶと思います」
そうして仏壇からし○ぶの鍔を取り、自然な動作で義勇の鍔と重ね置いた。
「……俺は然程、長生きは出来ない。後、俺はもう水柱ではないから冨○で構わない」
痣が出ている者は二十五歳以降は生きながらえないと知っている。しかも無惨戦にて相当の傷を負っている事を考えてもそれは妥当だと考えていた。
それなのに妹から姉の形見を貰うわけにはいかない。
「それでも……それでも姉さんはあなたに持っていて欲しいと思います」
そう言って真っ直ぐ見つめてくる瞳は血の繋がりはなくとも確かにし○ぶの妹なのだと義勇は感じた。
それにしてもカナヲの様子からして彼と姉の関係を知っている風にも感じる。
だがら何故俺に、と言う問いは飲み込んだ。そんなことは些末事だ。
そう、そんなことより以前には見せたことない感情を打つけてくる、こんな少女を見たら胡蝶はきっと喜んだに違いないと義勇は感じた。
お前の妹は昔のお前のように感情が豊かになっているぞと心の中で思う。
「……承知した」
だから静かにそう答えた。それが彼女の願いだというのなら叶えたい。
「一度、仏壇に供えさせて戴いても?」
「……構わん」
カナヲは義勇から彼の鍔と姉の鍔を受け取り、二つを合わせるようにして仏壇に供えた。
そして静かに黙祷をし、暫くすると義勇の方へと向き直る。
「み……冨○さん、どうぞお受け取りを」
カナヲが彼をそう呼ぶと一気にし○ぶとのことが思い出された。
―冨○さん、そういうところですよ!―
その呼び方が懐かしい。
今もなお鮮やかに思い出せるのに不思議なものだ。
お前は本当にいないんだな……この栗○落カナヲと蝶屋敷の子供たちを残して逝ってしまった。
そう思うと鈍い痛みとなって義勇の胸を切り付ける。
刀ではなくお前自身が何故残らなかったのか。
何故共に戦えなかったのか。
幾ら考えても答えなど決まっているというのに。
それでもあの夜は二人だけもの。
それだけは確かなことだった。
カナヲから受け取った、掌にある二つの鍔はまるで最初からそうであるかのように自然にしっくりと重なっていた。
「……有り難く受け取る」
まほろばの蝶 壱ノ巻2
そう言って己の布で包んで二つの鍔を己の懐に仕舞おうとすると、
「これをどうぞ」
静かに袱紗を渡してきた。その模様はし○ぶが着ていた羽織と同じ模様であった。
「それで包んで上げてください」
「……助かる」
姉に対して、そして彼の腕への気配りがそうさせたのだろう、だから慇懃にカナヲに向かって一礼をする。
「姉さんの鍔を受け取って下さって有り難うございます。またし○ぶ姉さんに会いに来てやって下さい」
「……栗○落が構わないのであれば」
「是非にお願いします」
自分の姉と彼の間に何があったかはカナヲは知らない。ただ二人の間にある絆を感じ、鍔を託しただけだ。それが自然だとそう思った。
「冨○さん、おじいさんになるまで生きないと姉さん、怒りますよ、多分」
「……そうだな、胡蝶ならきっとそう言うだろう」
そう言って静かに義勇は微笑う。
カナヲは彼の笑顔に少し驚いた表情をしたが、それに釣られるようにして微笑った。
その笑顔が又し○ぶに似ている……
「……胡蝶によく似ているな、栗○落は」
「姉さんに……」
「とてもよく似ている」
「それなら嬉しいです」
少し気恥ずかしいのだろう、顔を赤くしてそう言った。
その一つ、一つの動作が何処か嘗てのし○ぶを彷彿させ、彼を切なくさせる。
「……炭治郎とは上手くやってるのか」
「え」
何となくそう尋ねた。
「そ、それは……」
「仲良くやるといい」
それだけを言って義勇はその場を後にする。これ以上は想い出が押し寄せ、辛くなる。
それでも彼は又、此処に来るだろう――命尽きるその日まで。