ISRSさんのレビュー一覧

まず、この作品の特徴として、エピソードがすべてベッドの上で展開されているという点が挙げられます。これにより、物語の中で主人公と同じように布団やベッドに横になりながら聞くことができ、臨場感を感じることができます。また、マイクの高さ位置を調整することで、詩乃がどこにいるかがシーンごとに分かるように収録されている点も工夫されていると感じます。
キャラクターの詩乃は、恋愛や流行の話が苦手でありながらも、ミステリアスな雰囲気で憧れを抱かれているという興味深いキャラクターですね。彼女のマニアックな趣味や、猫の「にゃー」を飼っているという要素も、彼女の個性を豊かに表現している印象があります。
そして、それが本当に巧妙にダウナーな声で囁かれています!
また、ASMR作品として、詩乃の「ささやき」や「呼吸音」、そして「心音」を通じて、一緒に眠りながら共感や安心感を感じることができます。
特に、彼女の魅力が徐々に明らかにされるストーリーも、聞き手を引き込む要素となっていることでしょう。

特有の雰囲気やキャラクターの深みを楽しむことができそうです。 ASMRが好きな方や、日常系の恋愛物語が好きな方にとってはもちろんのこと、初めて耳にする人にも心地よい時間を提供してくれるでしょう。

内気なカワイイあのコが自分だけに微笑んでくれたら、自分だけにこっそり素性を明かしてくれたら...という妄想をする人は少なくないでしょう。そして、この音声作品であればそれはとても簡単に実現します。

ストーリーも音声も、全て素敵なのですが全てを伝えるには総文字数も言語化力も足りないので一つだけ、一番大事な部分を。

「記憶は消えても...感情は消えない」
この作品で、なゆちゃんが導いた大事な想いの一つであり、やはり他のタイムリープモノのお話でも見られるような人間関係と結び付ける、美しい古き良き結論の一つなのでしょうね。
でも、それを音声、一人称の話、声だけで表現してる作品って中々無いですよね。
映像なんてもちろん無ければ、地の文もなく。
吐息、声色の機微...伝えるために使えるものを、全て使って。
そしてできた言葉に籠る、見えないけど確かに感じられる想い。
これは今までどのタイムリープ作品にも無かった、全く新しい一つの形でした。

少しでも興味があるなら、それを味わうためだけに聴くに値すると、最後にお薦めさせて頂きます。

何をお伝えすればよいのか、といえるほどの濃密な内容の作品なのですが、音声の技術的な面についての良さをお伝えするにはおよそ浅学なので、ストーリーの感想について簡単に書かせていただきます。

この作品の前日譚に当たるナツトリップは文字通り、夏の小旅行という非日常感の中に存在する蕩け始める関係を味わえる作品でしたが、
フユメモリーでは日常譚の中での百合を味わえる作品です。

実際に同棲生活を始め、二人だけの空間でのみ許される様々な"お楽しみ"の目白押しだったり、夢を追う中での紆余曲折を二人で乗り越えていこうとする姿だったりと、百合に飛び込んで百合に包まれるような感覚でした。
胸焼けするくらいの酸いと甘甘甘...が入り混じった空気を感じられ、そしてそこに難なく移入できる、決して視点透けしないように作られているこのシリーズ、改めて素晴らしさを思い知ります。

説明にあった通り、夏の短編の後日譚でありながら、しっかりと独立していてこの作品だけでも十二分に満足できると思います。

またこの作品を総じて形容するなら、ということで、
二人で夢を叶えようとする彼女達のお話、そして作中の屈指の見せ場ともいえる、ベーゼを織り交ぜた"coming"な白昼夢...のようなお話だと思ったのでこのレビュータイトルとしました。

本当に夢のような一時で、而してそこにちゃんとある彼女達の「夢」のお話、是非味わってほしい作品です。

物語は大学生4年生の夏休みというモラトリアム期の終わりと長く続く大人の日々が見え始める時期、そんな激動の時期のように二人の関係は進み、そしていつまでも続くように暗示され幕を閉じる、それを淡く甘い夏の或る一日として描かれている素晴らしい作品でした。

海で遊んだり一面の向日葵を二人で眺めたり、花火をしたりと二人だけの鮮やかすぎる夏を楽しんで、時には日焼け止めをお互いに塗ったりお風呂で身体を洗ったりして契りを結ぶような、これまた二人だけの濃密な夏を味わうことができます。

そして何よりも、場面場面で柚乃が時折見せる、普段のクールさとはかけ離れたあどけなさや無邪気さ、そんな柚乃の感情の機微が、柚乃を演じられている土屋李央さんによって非常に繊細に表現されており、より私(主人公)の気持ちになって物語の中に深く潜り込むことができます。特に、不意に柚乃が私(主人公)への本音の想いをささやく瞬間は、あまりの臨場感に男女問わず心が揺れ動くと思います!

百合作品が好きな人には言うまでもなく、普段百合作品に触れる機会が少ない方にも最高の"百合体験"として、また或る夏の日を彩り豊かに描いた一つの音声物語として、是非味わってほしい作品です。