1トラック目から、炭酸が耳元で鋭く弾けて、奥野香耶さん演じるサカナの声と水音が遠く近く揺れる。音と声が作り出す世界に圧倒されました。
・世界の終末にたった二人きりの生徒と先生という設定
・サウンドスケープ
・音声作品という媒体でできるギミック
全て単体で作品になっていても手に取っていたであろう素晴らしい物語と音と声が押し寄せてきます。
今聴いている音が現実なのか、夢幻の世界なのか、あるいは…わからないまま、けれどそばにある終末というシビアな現実に絶えず緊張感をもって、
大きな波に攫われて、気が付いたら遠くまで来ていたような
音に包まれて、身体の感覚が溶け出してしまったような
そんな非日常的な感覚をイヤホン1つで味わった作品です。
普段よく音声作品を聴く人は、音と声を通して何らかの「体験」をすることに富んでいると思います。挑戦的な作品でありながらも、この作品の根本はその体験と強く通じていると感じました。
なので、音声作品が好きな人、聴覚での体験が好きな人に広く聴いてほしいと思いました。