痴愚さんのレビュー一覧

某新左翼グループの元幹部が出所してから久しいですが、過去の闘争や現代社会への当人の認識や設定そのものから考えるに、柏山みきは恐らく彼女がモチーフなのでしょう。尤も、彼女の方はただの老人なのですが…(もしかしたら革命と恋を忘れてしまったが故なのかもしれない)
作品の設定上「人民」などといった新左翼的な言い回しが多用され、それらがロリボイスから発せられるのですが、それが非対称的で形容し難い可笑しさが感じられるポイントとなっています。また、かなり歳を取っている設定になっていますが、年配特有の経験を感じさせる語り口によって、ロリボイスであるにも拘らずそれが自然に感じられて、違和感なく話に聴き入る事ができ渕崎けけろさんの表現力に感心させられました。
政治的なテーマですが、この作品自体には扇動的な要素は無く、また、ロリボイスによって政治感が和らげられているので、(左派的要素に非常に嫌悪感を示すタイプを除いて)聞き手の政治思想関係なくライトに楽しむことができる作品だと思います。

作品内容からも読み取ることができるように、かなり悲惨な方法でのわからせであり、また、それを発見した後輩ちゃんの反応も非常にリアリティがあるものなので、そういった類の救いのないわからせや残酷な描写が苦手な人は注意が必要です。また、現実でこの様な行為を至りかねない悩みを抱える方も気をつけたほうが良いかもです。
かなりショッキングな内容ですが、それをしっかりリアリティを持たせ演じられていることで、「本当に好きだったのだろう」「本当に受け容れられていないのだろう」といった様子が非常に強く感じ取れてしまいとても心に来ます。また、後輩ちゃんの台詞や声の起伏から、彼女がどんな気持ちであるかが考えさせられることで、より彼女が抱いた絶望感を感じられます。
台詞や演技がとても精巧な作品となっており、わからせとしては勿論、鬱ストーリーとしても楽しめます。

純愛系サークルとして信頼を寄せる幸福少女さんの全年齢作品。スルーという選択肢はなかったし、とりあえず購入していつも通り数日かけてゆっくり聴こうかと考えていたが、いざ聴き始めるとつい夢中になってしまい気づいたら聞き終えてしまっていた。そんな作品。
今作も幸福少女さんらしい「ヒロインの幸福な未来を想像できる」作品であるという大前提の上で、今回の作品は普段の幸福少女さんの作品と比較するとかなりシリアスな雰囲気を作品全体を通し内包していると感じる。普段の幸福少女さんの作品というとシリアスな要素があっても甘々さ、或いはえっっっっさによって中和され、“幸福”感を味わえる作品だが、それらとは異なり、甘々であるがストーリーに重点が置かれており、シリアスさや儚さを作品を通しかなり感じる。それ故に、音声作品で癒やされ(リラックス的意味合い)たいというタイプには向かないかもしれない。同時に、ストーリー性の高い純愛系音声作品を求める私みたいな人間にはとてもおすすめである。
しかしシリアスな要素があっても「流石幸福少女さん」と思えるほど綺麗にまとめられており、聴き終わった後の感動はとても心地よく、超個人的な経験でこの感情を表すと、オー・ヘンリー傑作選を読了した時と似たものである。また、縁側こよりさんの演技によってヒロインのキャラ性の良さや可愛さが増幅されており、シリアスだったりするが、同時に胸キュンのような感情も多量に享受できるので、シリアスで胃もたれすることは恐らく無い(自己基準)ので安心してほしい。
レビュー書きつつストーリーを思い出してるだけで感動が蘇ってくるので本当におすすめできる。特典としてシナリオ台本も付いてくるので是非視覚と聴覚で楽しんでほしい。