同サークル様の過去作を購入していたので今作も過酷な展開を覚悟していたのですが、晶紀くんは妹に怒りを抱きつつもかなり血の通った情け深いお兄ちゃんなので体感の糖度はこれまでより若干高かったです。というか、ここまで恨んでいるのにも関わらず妹のために治療費稼いだり、毎日見舞いに来ている時点で情が残りすぎているので最初から勝ちが確定しています。
本作は「看取られ体験ボイス」という異色のコンセプトを掲げており、その上台本も一般にイメージされる看取られとは程遠い、家族特有の葛藤や愛憎をメインに取り扱ったかなり陰鬱な内容になっています。
本作に登場するお兄ちゃんは、交通事故によりほぼ植物状態になった妹のため、仕事終わりの疲れを押して毎日見舞いに訪れながらも、枕元では今まで言えなかった過去の怨恨を次々と言い募ります。そのちぐはぐさ、愛したいのに憎みたい、愛せないのに憎めないというアンビバレントな感情が全面に出ていてすごくリアルでした。
また、台本の良さもさることながら、担当声優さんの絞り出すような声色やaエンドの文字通り涙を呑む演技もとても真に迫っていて、お兄ちゃんが私のためにこんなにも心を砕いてくれている……と終始胸キュンが止まりませんでした。
個人的に、妹として生まれると少なからず「自分は兄の人生の邪魔になっている」という罪悪感みたいなものを幼少期に抱いたことがある(この度合いが強いとブラコンになる)と思っているのですが、このサークル様の作品はそうした過去の傷のかさぶたをガリガリと引っ掻いてくれるような痛気持ちよさがあります。他の作品では体験できない唯一無二の感情をもたらしてくれるので今後も買い続けると思います。
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