この物語は雨音から始まります。その雨音が心地よい音だったので、自然と物語の中に入っていくことができました。
そんな中で出会った雪音という女の子は、14歳と思えないほどに大人びた話し方と落ち着きがある子です。ただ「あめ(わたし)」と出会い、ペットと飼い主という関係値になって心をひらいていくにつれて、雪音ちゃんの話し方に甘えたような幼さが混ざってきます。この変化を高田憂希さんが程よい塩梅で届けてくれるので、すごくキュンとしました。さらに雪音ちゃんと「あめ」の距離はお互いの体温を感じられるほど近いことが多く、そこに甘い幼さのある声が加わるとなると破壊力抜群です。ささやき声といいますか、通常の話し方であっても空気が混ざっているような柔らかい声で話してくれるので、キュンとしつつもゆったりとした気持ちで日々を過ごせました。
ペットと飼い主というと主従関係が非常に強く、日常やまったりという言葉は似合わないように思ってしまいます。ですが、この百合音声作品では主従関係を強く思わせる描写はそれほどなく、飼い主である雪音ちゃんはペットである「あめ」をとても大事に大事にしてくれます。嫌がることは絶対にしない飼い主さんです。ただ、若干の「あめ」に対する独占欲が言葉の端々に感じられて、そこで「わたし(あめ)」は雪音ちゃんのペットであるということを実感できました。
イラストに関しては、初めはとても綺麗で儚げなイラストで素敵だなという印象でしたが、雪音ちゃんと「あめ」が一緒にお風呂に入るシーンを聴き終わったあとに改めてイラストをみると、2人の髪質の描き方が異なっていることに気づいてとても驚いたので、そこも注目してみてください。
物語から戻ってきたとき、いつまでも誰にも邪魔されずにふたりで幸せに暮らしてほしいなと、そう願わずにはいられない作品でした。