numutoさんのレビュー一覧

幼稚園からの23年来の幼馴染である貴呼と佐知子。恋人関係にあり事務所を立ち上げて共に生きていくつもりだったが、約3年前に突然貴呼が失踪してしまった、という佐知子の現状から始まる物語。2人の23年来の共依存関係を描いた百合ではありますが「失踪」をテーマに2人の関係性が大きく変化した出来事をミステリーとして解明していく百合という感じです。所々で時系列順ではない回想が散在し、幼馴染百合ならではのフランクな感じが描写されているのは百合として非常に魅力的です。

2人で立ち上げた事務所での何気ない日常、2人の過去を描いた回想、旅行先の旅館での休養の毎日、楢崎との種々の会話、その他登場人物との出会いや小さな出来事などなど、が淡々と描かれているのが特徴的です。そういう断片が最後に積み重なって「貴呼の失踪」が辿り着く感動の結末を享受出来るものだと思います。1周で理解するのは中々困難ではありますので、お時間のある方は是非2周を前提に、あるいはもっと気合のある方は淡々と描かれる多量の日常情報の中から重要な情報を嗅ぎ分けてメモをつけ、最後の最後で答えわせをするような楽しみ方をしても良いかもしれません。

また、文章以外の面でも特筆すべき点はあります。まずは何と言ってもCGでしょう。独特な雰囲気のある、輪郭がくっきりしていながら可愛らしい雰囲気のある和やかな絵柄がミステリー色の強い本作の中に甘い百合の雰囲気を与えてくれています。CVはありませんが、会話の際に立ち絵が本当によく動くので人物の口調の抑揚が視覚的にもわかりやすいです。時々物凄く長い台詞があって読みにくくなることはありますが、SeaBedならではの表現だと思います。畳み掛ける情報量に圧倒されるような感覚が面白いです。

あなたにとって間違いなく充実した15時間になると思います。是非!!!

物語の傾向としてはあらすじから推察される通り不気味な世界をテーマにしたミステリー要素を含むホラー・サスペンスです。序盤は例えば暗闇の中に人間の死体を発見したり命に関わるような出来事があったりとサスペンス色の強い展開が多く半分近くのBAD ENDが集約されていますが、後半になっていくと一気にミステリー色が解禁されて急速に謎解きが進んでいく感じです。

TRUE ENDに関してはネタバレなのでほとんど何も言えませんが、HDリメイクの本作で追加された新規ルートで、それまでのルートで大きな謎であったある要素が解明されて真の結末を迎えるわけですが、最終的には心と心がぶつかり合う人間ドラマに終着して、人の魂が起こす奇跡に魅了されて、まるで深海の底に差し込む光の温かさを感じながら浮遊感のような開放感を自覚していくような不思議な感覚を味わうことが出来てよかったです。新規ルートで姉妹百合が追加されて5年前に行方不明になった妹に関連する人間味あふれる描写が見られたのも個人的によかったです。

不安感を煽る不気味な描写を楽しむのがメインになるからこそ、全年齢向けの作品であることは非常に惜しいと思います。個人的には年齢制限を引き上げてもっと豊かな殺人展開をBAD ENDに収録して欲しかったなぁと。

起動時に「心臓の弱い方はご注意ください」との注意書きがあり流血を含めた猟奇的な描写が含まれますが、全年齢対象作品としてマイルドに表現されています(モザイクは使われていません)。CGとして描かれはしませんが、文章では割と生々しく表現されていますので公式HPのサンプルCGを見て特別な不快感を催す場合は注意が必要かと。

不気味な一時を体験出来ると思います。サスペンス色の強い本作品ですが、猟奇描写は全年齢向けに比較的マイルドになっており、値段も決して高くないので気楽に楽しめる作品だと思います。プレイ時間は恐らく5～6時間くらい?

乱文失礼致します。

物語は1通の脅迫状に関連するミステリーと、「結海を守るために仕方なく恋人関係を築いた」海琴と、「突然見知らぬ先輩から告白されるも、その存在に徐々に魅了されていく」汐里の、根本的な部分で噛み合っていない歪んだ百合を描いた物語です。時には人間らしく猜疑心を全面的に表出して敵対する百合が見られたり、時には絵に描いた恋人のように甘く純粋な百合が見られたりと、幅広い展開を楽しむことが出来ます。

舞台設定は鎌倉ですが、小等部から大学部までエスカレーター制になっている箱庭と言わんばかりの女学園が主な舞台となっており、比較的非現実的で耽美な世界観が前提となっています。こういう女子校百合でありがちな姉妹制度は設けられておりませんが、携帯電話・スマートフォンの持ち込みが禁止されていて独自に手紙を通じた意思疎通の文化が発展(あるいは残存?)しているのは、桔梗女学園が特別な空間であることを印象づけていると思います。

また、sheepDさんの描かれる繊細で儚げながらもどこか可愛らしいような雰囲気のある絵柄が作品の甘い要素や非現実的な空間と非常にマッチしていて、当作品の魅力を最大限に高めてくれています。声優さんに関しても特筆すべきかと。汐里は門脇舞以さんがCVを担当されており、純粋無垢でどこか弱々しい彼女の雰囲気が非常に的確に表現されていたと思います。海琴は倉知玲鳳さんが担当されており、容姿端麗で完璧な人間に見える一方で内面はがさつな部分が多く仲の良い友人からはその性格の悪さを理解されているような彼女の、強気ながらも不器用な感じに非常にマッチした声だと思います。他の4人も全然違和感なく、とても聴き心地の良い声ばかりでした。

最後に補足すると、男性は登場しませんので男性が苦手な方でも安心して楽しめます。機会性同性愛のような描写も殆どなく恋愛感情が丁寧に描かれています。