作品内容に惹かれて手に取ってみました。
導入から切ない気持ちになりましたが誘われた世界は失ってしまった彼女との甘い夢のような、ふんわりとした世界でした。そんな世界で彼女からは癒やし貰い、そして掛けられる言葉の端々に愛を感じられました。けれど、それと同時に現実を知る聞き手からすれば彼女の口から出る言葉には叶わぬ未来がある…そう何度も思わされて、終盤のトラック7でそこに至るまで積み重なった想いと同時に涙が溢れてきました。
しかし…同じトラック7で知る彼女の抱いていた本当の気持ち。感情の発露。そしてそれを聞いた彼(聞き手)が取った選択。この時点で結構胸が苦しく…というかギュッとなりつつあったんですが…それを踏まえた上でのトラック10…トドメでしたね…。久しく感じることの無かったくらい、胸をギュッッッッと掴まれました。
彼(聞き手)が取った選択が正しいのか間違っているのか……や、事この作品において正しいも間違いも無いのかもしれないですね。幸せのカタチは人それぞれとも言いますし。
ただ…もし、もし自分が同じ状況に立たされたら…その手をどうしていたか………多分、振り払えないんだろうな……だって目の前にある幸せを逃したくはないだろうから…。例えそれが、現実から目を背けている、と揶揄あるいは非難されたとしても。
「冬」という名を持つ彼女から優しさや暖かさを貰いながらこれからも泡沫の中で、外は明けることない真冬でも、二人が過ごすそこは温かな春でありますように…。
胸を締め付けるような結末でも、こういう願いを持ってしまう。そんな作品でした。