以前別のプラットフォームで販売されていた作品の続編。前作は既に販売を終了しているのですが、今作に前作の台本が同梱されている為未購入でも問題ないかと思われます。
内容は表題の通り「犬」として監禁されている聞き手がヒロインの寵愛を一身に受けるというシンプルなもの。ヤンデレ、加虐的な表現は控えめで「甘い雰囲気の短編シチュエーションボイス」の側面が強いです。
しかしジャンルの肝は押さえられており、ヒロインは聞き手に対して終始好意的であり愛情を伝えてきますが、ヒロインの反応から作中の聞き手はそれに対して必ずしも肯定的では無い様子が伺えます。その点を踏まえて作品を聞き返すとヒロインの言葉の端々に独善性が感じられるようになり、彼女の愛が一方的で歪んだものであるということが察せられます。
とは言えあくまで聞く側の想像に委ねる程度の描写でしかなく、どのように捉えても楽しめる懐の深い作りこそが本作の一番の魅力と言えるでしょう。
短いながらも秀逸な構成。傑作です。
以下、レビューを逸脱した妄言。
トラック名に「とある日の甘いおしおき」とありますが本編は肝心の「甘いおしおき」が始まる所で終了してしまいます。作品内の聞き手(=主人公)はお仕置きを享受しているにも関わらず現実の聞き手(=我々)は追体験どころかそれを観測することすら叶いません。
ここに違和感を覚える事は簡単ですが私はこう考えました。これは飼い主が犬に行う「おあずけ」の躾そのものではないか?と。
お仕置きとは躾の一環であり、「おあずけ」はその中でもとりわけ残酷で甘美なお仕置きの一つです。
つまり本来追体験するしかなかった「甘いおしおき」を我々は実体験させられているという事になります。
フィクションだけに留まらず現実の聞き手をも「犬」にして「おしおき」を与える。シチュエーションボイスの枠を越えた表現を本作からは感じました。