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都会というには不便過ぎ、田舎というには開けすぎている。
そんなどこにでもありそうな、これといった特徴もありはしない町。神庭町。
そこに生まれた人間は、ただ何事もなく生き、そして何事もなく死んでいくのだろう。
まこと平凡なこの土地においては凶悪な事件など起こりようはずがない・・誰だってそう思っているに違いない。
だが、しかし、ちょっと待ってくれ。
そんな町だからこそ、人間たちはまた十分に理解しているのではないだろうか?
「まさか、あのヒトがそんなことをするなんて・・・」
この世の理として、道理として、一見目立たないことほど、実際に裏では何が起こっているか分からないものなのだ。
一皮剥けばそこは闇。
24時間営業のコンビニエンスストアにだって、あなたの部屋の隙間にだって。
闇はどこにでも存在し、いつだって、ぽっかり口を開けて獲物を待ち構えているのである・・・。
この物語の主人公は「人間」ではない。
それでは何だと尋ねられても、おそらく本人ですら分からないと首を振るだろう。
重要なのは、彼がこの物語の主人公であることと、人間ではない何かだということ。
そして彼が人間を「食う」生き物だということである。
ばりばりむしゃむしゃと、それはそれは美味しそうに人間を食う。
食われた人間はもちろん死ぬし、死んだ人間を見て、彼は涙を流す。
ああ、私はまた人間を殺してしまった・・と。
人間の「ふり」をして生きる彼は、人間のことを人間以上に愛している。
愛しているからこそ人間を食い、殺し、涙する。
涙すれば、また腹が減って・・・腹が減った彼は本能に従う。
腹が減ったな。どうせ食うなら女が良い。とにかく若い女が良い。
今日もまた彼の空腹を満たすため。
平凡かつ健全なその町の人間がひとり、誰にも気に留められることなく忽然と消え失せるのだった。
・当サークル作品は内臓描写などは抑えてありますが、グロテスク・猟奇的表現ばかりです。
それら表現が苦手な方はご遠慮ください