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都会から一歩離れると、あちらこちらに謎の集落があるのをご存知だろうか?
そこには背の高い建物は無く、発展途上国のようなトタン屋根の家々が窮屈に立ち並んでいる。
人の気配もまばらで、暗く、どこか物寂しげな雰囲気を醸し出している。
遥か昔、その住民の子孫は代々に渡り、忌み嫌われる存在であった。
身分の差を政府がつくった折、政府より「一斉排除」の名目にてかき集められたその地域は周囲から掃き溜めのように扱われていたのだ。
かつての歴史で追いやられた人たちのコミュニティともいえるその集落では、今も尚、現代では考えられないような風習やルールが残っている。
まるで時がその場所だけ止まったような錯覚に陥ることもある。
また、その集落はよそモノに対し、警戒し、時に威嚇する。その土地そのものが、外界と交わる事無く独自の発展を遂げてきたのだ。
日本の原風景と言うべき場所なのか、あるいは閉塞された地獄と呼ぶべき場所なのか誰にもわからない。
治外法権ともとれるこの場所では、暴力、クスリ、強盗、強○とネガティブな言葉の事件が数多く起きている。
一つだけいえるのはこの整備された世の中であるにも関わらず、この地域では不穏に満ちたおぞましい出来事が起こっていることだけだ。
エピソオド1
『立ちんぼ』
カオリは息子を抱えたシングルマザー。夜更けにこのクラヤミ集落で『立ちんぼ』をしながら息子を養い、生計を立てている。
肉体労働の為、心身共に疲弊していたカオリはいつしかドラッグに手を染め、重篤な中毒者となり、ソレ無しでは客を取らなくなった。
悪循環の繰り返しは、永遠の螺旋を描くように深い闇底に落ちていく。
今宵も醜悪な客人を相手にカオリは春を鬻ぐ。
その光景を涙を浮かべながら密かに見守る息子。
悔しさと悦びの葛藤の中、彼の足元には栗の花の匂いを放つ白薔薇が静かに咲き乱れるのであった。