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ある日仕事から帰宅した僕は、郵便受けに珍しいデザインの封筒が入っているのを見た。明らかに女性から届いたものである。平凡でつまらない生活を送っている僕にこのような派手な封筒が届くはずはない。すぐに送り主を確認した。それは久しぶりに目にする名前だった。中には送り主自身が描かれたイラストと手紙が入っている。
もうかれこれ5年くらい前になるが、僕は十歳以上年齢の離れた女性とお付き合いをしていた。僕がまだ世間知らずのウブな大学生だった頃である。彼女とはバイト先の飲み屋で同僚として知り合った。
これと言った取り柄もなく、特に夢や目標も持っていなかった僕は、何となく大学に進学したが、お金も無かったので、近くの居酒屋でアルバイトをすることにした。弱気で人見知りで右も左も分からなかった僕に優しくしてくれたのが彼女だった。もう何年もここで働いている感じだった。男勝りな強気な彼女と、外見内面ともにいかにも弱々しい感じの僕は何故かお互い惹かれ合い、バイト後に二人で食事をしたりもした。そしてある日、彼女は僕を誘惑したのだ。女性経験が皆無だった僕は、彼女の大人の魅力に抗えず、瞬く間にその虜になる。僕たちは数年ほど親密な関係にあった。
彼女は昔アーティストを目指していたらしい。本人は今も目指していると言っていたが、それを真面目に聞いてくれる人は、彼女の周りには誰一人いなかった。
端的に言って、彼女は変態である。それもぶっ壊れた変態だ。アーティストを名乗り、定職に就かず、結婚もしていない。奇抜な色に髪の毛を染め、人と話す時は強気な態度を崩さない、表面的には尖った人間である。しかし、その実態はと言えば、人生のあらゆる希望が絶たれ、もはや目先の肉体的快楽に生きる理由を見出す他なくなった、堕落したセックスマシーンなのだ。今の彼女から肉欲を奪えば、もぬけの殻になってしまうのではないだろうか。この手紙を読みながら、僕はそう感じた。どうして彼女は今になってこのような手紙を私によこしたのか。彼女と別れ、平凡で味気ない生活にすっかり慣れていた僕は、久しぶりに人間の闇を垣間見たのである。
(画像9枚 + 文章、セリフ)
(※この作品はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。)