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主人公の鉄二は、中学時代の大怪我が元で、レギュラーだったサッカー部を辞めるはめになってしまった。
リハビリで身体だけはなんとか元通りになったが、人生のすべてだったサッカーができなくなり、性格が歪んでしまう。
そのせいで、周りの友達は鉄二から離れてしまい、いつしか彼は、陰キャに成り下がっていた。
時は流れ、高校生になっても友達はできず、鉄二は未だに陰キャのままだった。
進級した○年のクラスには、小・中学校で同級生だったハルカがいたが、その彼氏だとの噂の男、田村も一緒だった。
学年カースト一位の立場を利用し、好き勝手な振る舞いをする田村を、鉄二は日頃から煙たがっていた。
そんなある日、その田村に直接嫌がらせをされた鉄二は、日頃の鬱憤も手伝って、とうとう彼への復讐を誓う。
それは田村の彼女であるハルカを密かに寝取り、肉奴○とすること。そのことをもって、田村へ仕返しをしようと考える鉄二。
だが、なかなかハルカを脅す口実が見つけられない。
悶々とする日々の中、突然、下校中に現れた怪しげな露店。
その露店商から不思議な小石をもらった鉄二は、その小石――願石の不思議な力でハルカの弱みを握り、それをネタに脅そうとする。
しかし、彼女から返ってきた言葉は、思いもよらないものだった――――
俺はもう二七歳になってしまった。
刺激もなく、退屈な時を浪費する毎日。
今日もつまらない仕事がやっと終わり、酒を飲む気力も使い果たして、暗い夜道を歩いている。
(なにやってんだろう……俺……)
街頭の明かりだけが頼りの薄暗い小道。安アパートが建ち並ぶこの一帯は、いかにも底辺が住んでそうな古臭い住宅地だ。
こんな道が帰路である俺の安アパートもご多分に漏れず、風呂とトイレがあるだけでも御の字といったところだ。
人生どうしてこうなったんだと、見つからない理由を探しながらも、俺にはふと思い出すことがある。
こんな俺でも生きることが楽しかった時期があった。
未だに結婚もできず、彼女もいない悲しい俺でも、かつては輝いていた時代があったのだ。
それは今からちょうど一〇年前……
俺が高校二年のときだった――――
かつて、中学時代はサッカー部のレギュラーだった俺は、中二の夏休みに、自転車で派手に転倒してしまった。歩くこともままならなくなった俺は、生活の大部分を占めていたサッカー部を退部した。
青春のすべてをかけていたサッカーが出来なくなってからというもの、俺はすっかり変わってしまった。
卑屈な性格になり、他人に毒づくことで鬱憤を晴らすような、最低な人間になってしまったのだ。
そうなると、周りにいた友達も一人、二人と離れていき、気づいてみると、俺はすっかり友達ゼロの陰キャに成り下がっていた。
幸いなことに、リハビリのおかげで、正常に歩けるようにはなったものの、一度ひねくれてしまった性格だけは、元どおりに戻すことができないでいた。
そんな性格だから、二年に進級してもなお、俺は教室で一人ぼっちだった。
つまらない授業もやっと終わり、帰り支度をしていると、ひときわ耳障りな騒音が聞こえてくる。カースト上位、いわゆる俺とは反対の人種――陽キャの連中が騒いでいるのだ。
その内の一人がひときわ大声を上げた。
「おう、ナツミ! 今日も帰り、みんなとカラオケ行くだろ?」
「うん! 行く行くぅ!」
俺は心の中で舌打ちした。
(うるせーんだよ、クソ共がっ! そんな大声で誘わなくても聞こえてんだろう! 相手は目の前だぞ!)
でも、そんなことはみんなわかっている。これはアピールなのだ。俺を含めたクラス全員に対して――ナツミはオレの彼女アピール。
ナツミは最近こいつが付き合いはじめたという女子生徒。クラスでは上位に位置する可愛い子だ。金持ちのお嬢様らしく見た目は清楚っぽくしているが、性格は正反対。よく喋るし、話し方もバカっぽい。さらに俺にはイヤミったらしい口をきいてくる嫌な女だ。
連中のもう一人が他の女子生徒を誘う。
「ハルカも行くだろ?」
「うん」
クラスカースト、いや、学年カースト一位の田村と、その彼女――ハルカとの会話だ。
田村は頭も良くスポーツ万能、それにイケメンときているいけ好かない野郎だ。
その彼女にまた腹が立つ。小中と同じ学校だったハルカ。
中学まではさほどでもなかったが、高校生になって突然大変身しやがった。
好みの問題といえばそれまでだが、とんでもない美人になったのだ。
中一のときだったか、隣の席になったときは随分と勉強も教えてやったし、同じ委員会になったときも結構な世話をした記憶がある。
それが綺麗になった途端、俺には知らん顔のくせに、パリピの野郎には満面の笑みだ。ふざけんな!
まあ、ひがんでも仕方がない。俺はカバンを肩にかけ、教室のドアを抜けた。
翌日の放課後。
いつものように教室ではあの連中が騒いでいるが、場所が最悪だ。ドアのすぐ前の机に腰掛けてたむろしているので、教室を出るのに邪魔なのだ。
それを避けて後ろのドアから出るという選択肢もあるが、それでは癪にさわるので、俺は連中がたむろする前のドアから出ると決めた。
ヤツラに近寄り、その脇を通り過ぎようとしたときだった。
何かが足に引っかかり、俺は盛大に前のめりに転んでしまった。
途端に連中の大爆笑が巻き起こる。
(いってー……)
声には出さず、俺は心の中で膝の激痛をこらえた。
「オイオイ。気をつけろよ、テッツゥ~」
後ろからの声で振り向くと、カースト一位の田村が薄笑いを浮かべてこちらを見下ろしている。
(この野郎が足を引っ掛けたのか……)
俺は瞬時にそう思った。
「お前に触れると、おれのカバンが汚れるだろ?」
そう言って、床に転がったカバンを拾い上げて、パタパタと汚れを払う仕草をする。
(足じゃなくてカバンか。カバンを俺の足元に出したのか)
すぐに理解した。
「気をつけろよ! ウ・ス・ノ・ロ! アハハハハッ」
再び巻き起こる爆笑。
(なんだとこの野郎!)
俺はあの事故の前まではスポーツ万能だった。運動神経が良いことが自慢だったのだ。なのに――――
(ウスノロだと?! ふざけんな!)
だが、口には出さなかった。いや、出せなかった。
連中に口答えなんかしたら、あとから何をされるかわかったもんじゃない。ヤツラが束になってかかってきたら勝ち目なんてないからだ。
(くっそぉー!)
悔しさで震える腕で起き上がった俺は、膝についた汚れを払うことなくその場から走り出した。
早足で校門から飛び出した後も涙は止まらない。
(クソ! クソ! クッソー!)
家に着いてからも、しばらくは悔しさがおさまらず、少し冷静さを取り戻したのは布団に入ってからだった。
仰向けで天井を見つめながら、あの場面を思い出す。
机に座り俺を見下ろす田村。その周りには男の取り巻き二人が並ぶ。その横にはナツミとハルカが立っていた。ナツミはいつものように大口を開けて笑っていたが、俺が気になったのはハルカの方だ。
眉根を寄せ、俺をゴミか虫けらを見るような目つきで見下ろしていたのだ。
(あの女……。クソが……)
あの蔑んだ表情を思い出すと、また頭に血がのぼる。
(ハルカの野郎――)
悔しさが怒りに変わる。
(絶対に許さねえ)
俺は心に誓った。
(ハルカのヤツ……、メチャクチャにしてやる)
その時、俺の心は決まったのだった。
翌日からハルカをどうしてやろうかと考えた。
レ○プはすぐに浮かんだが、それはやめた。それではダメなのだ。
ただ○すだけでは気がすまない。あのパリピ連中にも大ダメージを与えたい。与えなければ俺の心が満たされないのだ。
――そうだ
――肉奴○……
――肉奴○にしてやる
俺の出した答えはそれだった。
――アイツ……ハルカを俺の肉奴○にしてやる。身も心も俺のためだけに生きる肉の奴○――
そんな俺の肉奴○が彼女だと自慢する田村。なんとも惨めな野郎ではないか。
あのカースト一位の田村の彼女は、実は俺の肉奴○。ざまあみろだ。
そうだ。俺は鬼畜になるんだ。鬼畜になって奴らに仕返ししてやるんだ。
そう思うだけで、なぜか心がスーッと晴れるような気がした。
本作で使用した表紙・挿絵および差分CGを、おまけCGとして同封しています。
本編使用CG(本編で使用している表紙・挿絵)
jpgファイル 12枚(1600x2560ピクセル 600DPI)
おまけ差分CG
pngファイル 28枚(2481x3508ピクセル 600DPI)
jpgファイル 2枚(表紙絵 表題・キャプションなし)(1600x1200ピクセル 350DPI)
本編文字数:約35000文字
ノベル本作は『epubファイル』および、『mobiファイル』にて提供されます。
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