【雪見だいふくside】
私はDLsiteで音声をアップしている新人声優。
ここだけの話、私には少し気になっているリスナーさんがいる。
会ったことも顔も見た事もないけれど…
リプやレビュー、DMを通してだんだんと惹かれていってしまったのだ。
でも、私は声優だから恋はしない。
だからこの気持ちも恋心も秘密なの。
あっ!そうそう。
そんなことより聞いてよっ
今日は初めての声優イベントオフ会があるのっ。
「いつもリプくれるあの人、来てくれるかな…」
なんて淡い期待を胸に、私はステージに立った。
o,+:。☆.*・+。
ステージは大成功。大盛り上がり。
そりゃもう楽しいひと時だった。
イベントも終わり次々と人が帰っていく中、私はスマホを見て絶望した。
そう、終電を逃してしまったのだ。
「どうしよう…」
近くに泊まれそうなところもなくて、私は困り果てていた。
その時だった。
声をかけられた。
私のイベントにきていたリスナーさんに。
事情を話すとその人は驚いたように目を丸くした。
「今夜は野宿かなぁ」
なんて冗談言って笑ったらその人は
「そんなの絶対だめです」
と私の手をとった。
「あ…もしかして…いつもリプくれる××くん…?」
不思議だよね。
会ったことも顔を見た事もないはずなのに何故だかわかったの。
「あぁ、この人だって」
優しいその人はコクリと頷き私の手を引いてくれた。
下心など感じない優しさに、私はダメだと思いつつ、その人について行ってしまった。
o,+:。☆.*・+。
その人の家に着く。
初めての男の人の家。
初めてのお泊まり。
しかも相手は気になっていたリスナーさん。
嫌でも意識した。
あぁ、こんなこと考えちゃダメなのに。
こんなことしちゃダメなのに。
頭ではわかってたのに止められなかった。
o,+:。☆.*・+。
あぁ…まさか…こんな…
惹かれていたリスナーさんと繋がっちゃう日が来るなんて…
「もっと一緒にいたい」
なんて、困らせること言わない。
わがまま言わない。
でもせめて、今だけは…
私は貴方の髪にそっと手を伸ばした。