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作品内容
戦争が人の営みである以上、戦場もまたあなたの日常と同様、理不尽でみっともないものなのだ。戦争にまつわる情けない話を集めた短編集。
第1章 「幻影を追いかけて ドイツ海軍と「メトックス」騒動」
1943年夏、ドイツ海軍はUボートに対する夜間の奇襲攻撃の頻発に悩んでいた。これまで連合軍哨戒機の接近に早期に警報を発し、攻撃回避に有効に働いていたレーダー警戒装置、いわゆる逆探が突然効果を失い始めているらしい。さっそく対策を検討しはじめたドイツ海軍首脳は、しかし連合軍の流す欺瞞情報に踊らされ、疑心暗鬼にかられ、ありもしない虚像の「原因」にたどり着いてしまう。
第2章 「ほら吹き艦長航海記 伊潜水艦「バルバリーゴ」の幻の戦果」
第二次世界大戦において全般にパッとしなかったイタリア海軍のなかで、大西洋に派遣されてUボートとともに戦った潜水艦部隊は、数少ない例外の一つであるといえる。その中でもドイツ軍の最高勲章たる騎士十字章を受章した艦長を持つ「バルバリーゴ」こそは最も武勲の誉高き艦であろう。…しかし戦後、連合軍側の史料とその「戦果」を付き合わせてみると、いくつかの不可解な事実が浮かび上がってくる。その武勲は本当に存在しているのか…。
第3章 「分かれ争う艦は立たず 「キティホーク」の人種暴動」
ひとつの都市にも例えられるアメリカ海軍の空母には、やはり本国の都市のように様々な出自と人種の人間たちが乗り込む。そしてアメリカの都市住民たちと同様に人種間には緊張関係が存在していた。普段は規律と共同体意識の下に埋もれているその傷は、ときに表に現れることもある。
ベトナム戦争という不人気な戦いに、長期間駆り出された空母の艦上で、その傷は最悪の形で噴出することになったのである…
第4章 「くだらない悲劇 空母「グローリアス」の沈没」
ノルウェーからの撤退作戦中にドイツ戦艦に奇襲されて沈められた英海軍の空母「グローリアス」、偶然敵主力艦に遭遇してしまった「不幸な事故」として知られたこの事件には、実はその背後にある、情けなく、大変下らないある事情が潜んでいたのだ。無能と傲慢、保身と隠蔽にまみれたその顛末とは。