オリンピアは飛んだ

  • オリンピアは飛んだ [ロールシャッハテストB]
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オリンピアは飛んだ [ロールシャッハテストB]
販売日 2022年11月28日
カップリング
作者 まさみ
イラスト よに/yoni
年齢指定
全年齢
作品形式
ファイル形式
PDF
ページ数 12
ジャンル
ファイル容量
251.44KB

作品内容

あらすじ

少女型セクサロイドのアンナマリアは化学工場の爆発により空気汚染された、廃墟の遊園地を歩いていた。
彼女が思い出すのは同じ野良セクサロイドのオリンピアとここで過ごした日々。
オリンピアは観覧車のゴンドラから飛び下りて壊れたが、アンナマリアはその意図を未だ理解しかねていた。

二人の出会いは数か月前に遡る。
アンナマリアは事業の失敗を苦にした主人の無理心中に巻き込まれるも、持ち前の耐久性で辛うじて生還する。

その後廃遊園地に迷い込んだところをオリンピアに捕まるアンナマリア。
通行料として要求されたパーツの譲渡を拒み、観覧車7番のゴンドラでオリンピアと暮らし始める。

共に生活する中でオリンピアはセクサロイド専門の娼館から逃亡した過去を話し、二人はうちとけていく。
しかしアンナマリアの破損は思ったより深刻で日に日に劣化していった。

オリンピアは観覧車が回る本物の遊園地を見に行こうとアンナマリアを誘い、彼女はこれに同意。
友情の証にお互いの髪を編み込んだミサンガを作り、手首に嵌める。

しかしこの約束がきっかけで穏やかな日常は狂いだし……。

(SF/近未来/セクサロイド/百合)

作者Twitterアカウント @wKoxaUr47xGeAZy
(作品の裏話や情報を更新しています)

プロローグ

なんでオリンピアが観覧車から飛んだのかずっとそのことばかり考えている。
いや、落ちた、かな?
落ちたと飛んだじゃ似ているようで全然違う。
落ちるのは重力の法則に殉じた自然現象、飛ぶのは羽ばたく意志。
遊園地の空気は不可視の毒で汚染されている、普通の人間がここに入ったらもがき苦しんで命を落とす。私は大丈夫、人間じゃないから。

オリンピアと最初に出会った時、私はあちこち壊れていた。
肩の外装は剥がれて部品が暴かれ、至る所でバチバチ放電し、右足はびっこひいてた。
自殺?事故?どっちでもない。
白い肌に羽織ったネグリジェはズタズタに引き裂かれて、ご主人様が持ってる本に載ってたロールシャッハテストみたいに返り血が飛び散っていた。
私を壊し損ねてがっかりしたご主人様の顔はよく覚えてる。

「なんで一緒に死んでくれないんだアンナ、お前は俺の××じゃないか!」

最後にご主人様はそう叫んだ。
アンナマリア、それが私の|個体識別コード《名前》。ご主人様は略してアンナって呼んだ、私の前にいた猫の名前だって。
私はアンナ。ご主人様は……思い出せないのはエラー?
ご主人様のおうちを出てからずっと歩き続けてる。
高級セクサロイドには帰巣本能がインプットされてる、だからもし迷子になってもひとりで帰ってこれるの。だけど私は壊れてるから正常に作動しない。

壊れたら壊れたまんま、ずっと歩いてくしかない。

そうしてびっこをひいて歩いてたら深夜の遊園地に辿り着いた。ご主人様の部屋の窓から恐竜の骨格標本みたいなジェットコースターのレールや巨大な観覧車が見えたのを思い出す。
今はジェットコースターも観覧車も海賊船も闇に沈んでいる。
遊園地の周辺はすっごく静かだった。無人のゲートを通り抜けるとファンシーにデコレイトされたメリーゴーランドやコーヒーカップのアトラクションがでむかえる。どれも動いてない。死んでる……眠ってる?
「あんた迷子?」
声に反応して顔を上げれば綺麗な女の子が立っていた。
腰まである長い髪は毛根が青、先端にかけて水色に染まる不思議なグラデーション。
長い睫毛に縁取られた瞳はオパールみたいな七色の光沢を帯びていた。
その子は私の正面の観覧車、地面すれすれのゴンドラの上に腕を組んで仁王立ちしていた。
「とろいなあ、野良セクサロイドなのかって聞いたんだけど」
「野良……ご主人様がいないって事?だったら野良かも」
「自分でわかんないの?捨てられたんじゃないの?」
女の子の眉が片方吊り上がる。表情の作り方がすごく上手。この子はきっとすっごい高級品なんだ。私はぼんやりと女の子を見返す。
「ご主人様の生命活動は止まった」
「なんで?」
「窓を突き破って飛び下りた。事業に失敗したって言ってた」
「よくあるパターンね、しょうもな。道連れにされなかっただけラッキーだけど」
地上十階、ネオンの海に背中から落ちてくご主人様を思い出す。
「あ、ちがうか。その壊れっぷり見ると一緒に落ちたけど死ねなかったってとこ、図星でしょ。最新型は耐久力すごいもんね、タンクローリーに轢かれても無傷らしいし。名前は?」
「アンナマリア」
「私はオリンピア、セクサロイド専門の娼館から逃げ出してきたの。ここは私の領地、抜けてくなら通行料とるわよ」
「通行料?」
「現金……はもらってもしょうがないから物々交換でパーツね」
これ以上とられたら困る。だから断った。
「あげられない。ごめんね」
するとゴンドラから下りたオリンピアが高飛車に顎をそらし、きっぱり言いきる。
「じゃあ出さない。永遠に」

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