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2018年07月09日
左耳のお世話をしてくれながら、すずしろが何とはなしに鼻歌を唄いはじめる場面がある。
忘れるわけがない、あの歌だ。
この季節になると思い出す人がいる。
優しい声の人だった。
…意表を突くような仕掛けもなく、素朴に、ほんの短い時間を切り取ったささやかな作品だ。
しかしながら本作はやはり、どこか神秘的な色を帯びているように感じられる。
他のシリーズ作と微妙に切り離されているような。この縁側だけで世界が完結しているスピンオフのような。
それはやはり、'15年の同時期にリリースされた"すずしろ 雨の日"をなぞる作品内容に由来している。
ここで登場するすずしろは、雨の日に髪が「ぐねぐね」になるのを気にしてこちらに目隠しをする、あのすずしろだ。
雨が縁側を外界と隔絶して、何かの拍子に起きた小さな奇跡が、あの時の縁側に、ほんの少しの時間だけ導いてくれる。そんな想像をする。
それは淡い夢だけど。
でもせめてその歌が終わるまで、淡い夢でも浸らせて、と思う。
こんな半ば個人的な感傷をこういう場でつらつら書くべきではないのかもしれないけど。
でもやっぱり、この作品は、In memory of の作品だって気がする。
それで作品を通して示される、ひとつの当たり前のことに救われる。
つまり、雨はいつか止むということ。
だから雨宿りのひとときもまた特別なんだということ。
改めて書く。
餅さん、ありがとうございました。
2018年05月29日
2018年04月13日
入眠・安眠に的を絞った、貴重な催眠音声シリーズ東方入眠抄。
「安定の」という枕詞のしっくり来る最新作は、しかし新しい試みも取り入れつつ、過去最高の安眠効果を発揮する一品。
神社の狛犬のあうんちゃんが家までついて来て、眠らせてくれる。
毎度キャラクターに合わせたモチーフを軸にして催眠誘導を展開していくが、今回は「守護(まも)る」こと。
一瞬、〇部×蔵さんを思い出してしまい眠気が失せかけるが、あうんちゃんの柏手を聴くうちにそんな雑念も消えていく。
守られるという安心感のイメージと入眠は言うまでもなく相性がいい。
今回からの新要素、いよいよの、祝・バイノーラル化。
中盤から効果を発揮する。
自然に、ぬるっと声が移動すると、キャラクターの実在感は段違いになる。
エフェクト遣いも今までになく自然で、集中を妨げることがない。
あどけない声の可愛らしさも絶妙で、更にはささやきが素晴らしい。
やわっと融かされるようなくすぐったいささやき声。
中盤以降の展開は聴いてのお楽しみだけれど、今回も作品固有の独特の世界へ誘ってくれる。
そしていつもと同じく、その先は眠りの国、夢の世界へと続いている。
最後に素晴らしすぎるのが、今回のおまけは添い寝音声。
あるといいながある感じ。
切なくも甘ラブな空気感の中で、イチャコラしながら眠りにつける素敵なデザートになっている。
最後までお楽しみあれ。
2018年03月15日
ハードめな催眠音声の多いホワイトピンクさんは自分のストライクゾーンからは若干外れていて、今までご縁がなかったのだけど、これは直撃。
甘やかし系ギャル~お姉さん演技で幾つもの素晴らしい作品に関わられている秋野かえでさんが導く、とろけるような甘い夢。
まずはスタンダードな深呼吸を念入りに行う形式のシンプルな導入。
しかしこの時点で安心感が凄い。
秋野さんの声が良すぎるのだ。
丸裸の心で全部委ねて甘えたくなるような、天性なんて言葉でも使いたくなる癒しボイス。
誘導は浮遊感の中で白のイメージと甘いお菓子のイメージをからめていく。
言葉選びが洗練されていて、ゆったりしたペースでリラックスしながらトランスに入れる。
エッチパートではちょっと悪戯っぽいところも見えて、これも秋野さんの強いところ。ささやきボイス、なでなでされて、かわいい、と肯定される。
全部溶けて体の重さも消えるような…甘く優しい、癒し成分強めの気持ち良さ。
もう本当にありがとうという気持ちだ。
秋野さんの声でイチャ甘のイメージで催眠に入れるなんて、最高に決まってる。
甘えたい、甘やかされたい、催眠に興味あるけどM向けとかはちょっと…みたいな向きにも強くおすすめする。
2018年03月06日
女神ペルセポネは冥界の果実を食べてしまったために冥王ハデスと婚姻を結ばされ、一年のうちの何分の一かを冥府で過ごさなければならなくなる。が、それから、彼女が地上に戻る時期はペルセポネの母である豊穣の女神デメテルの喜びが地に満ちるようになった。
これが春という季節の始まりだそうだ。
そんなわけで、食いしん坊で若干抜けており、でも人妻ならではの包容力もある春の女神・ペルセポネの季節がやって来た。
物を食べる音だったり、ドライヤーだったり、勿論耳かきもあるし…あとこれが個人的に大好きな要素なのだが…音叉なんて飛び道具も出てくる。
ただ、本丸は女神が自身で作り出す音だろう。
つまり、ボイラバさんと言えば!な、ささやき。春の息吹こと、超リアル吐息。これが聴くうちに耳からこぼれるほどのボリュームで詰め込まれている。
駄目押しに、心音。こころね、である。
フリートークのパートで「自分の心音は大きいらしい」と言われている通りで、はっきりとクリアな心音。
それらが耳もとゼロ距離のところにあって、胸元に抱きしめられているような安心に包まれる。
にしても…他サークルさんの作品レビューでも書いたことを繰り返す形になるけど、ニャルぽむさんの変に飾るところのない演技、すごく良いんだ。
キャラクターを半分入れる感じっていうか。
あとボイラバさんの作品は"ささやき声の個性"みたいなのがはっきり出るところがあって、その部分が耳に心地いいっていうのも重要。
ささやきボイスアクターとしてのニャルぽむさんの声を堪能。
…あとそう……耳舐め・耳キス、ありますよね…。
あれ…された時…なんていうか…その…下品なんですが……フフ…。
……いやもうホント、僕は最近、えっちなやつってここまででも充分だなって思い始めていて。
だからもう専らR-15作品で春はあけぼのしています。
レビュアーが選んだジャンル
2018年01月12日
芥川作品を朗読した前作に続く、小粋さんの朗読作品集。
今回は、世界で初めて人工雪を作り出したことで知られる物理学者、中谷宇吉郎の作品を扱っている。
中に"冬彦夜話"という作品があるが、この「冬彦」というのは彼が師事した寺田寅彦のペンネームだ。この"冬彦先生"は夏目漱石と深い親交があって、そこに由来するのだろうか、中谷自身の随筆も実に楽しく読ませるものになっている。
自分は今のような寒い季節、朝の駅から職場に向かって歩く時、例年はアンビエントやピアノソロのアルバムを聴くことが多かったのだが、昨年末は専らこれを聴いた。
内容は様々ながら主に雪や冬について扱った内容、ウィスパー気味の小粋さんの声。外の空気を邪魔せず色付ける、聴いていて疲れるところも全くない、意味のアンビエントというか。
20分前後の長めの朗読が中心になっているところも、急かさない感じがして普段聴きにとても良いなと。
研究のために滞在していたシカゴのウィネッカ(『ホーム・アローン』の舞台と聞いて、成程と。あれも冬の話だった)の冬の様子について書いた"ウィネッカの冬"、ウサギの毛の先に雪の結晶を作り出すという何とも詩的な実験について書いた"雪を作る話"、ネズミに温泉で湯治をさせる実験の顛末についてユーモラスに綴った"鼠の湯治"あたりが特にお気に入り。
声質からとてもよく合いそうなのと、勿論自分が大好きなジャンルということもあるけれど、次は怪談朗読なども聴いてみたいなあと思いました。
レビュアーが選んだジャンル
2018年01月12日
2017年12月30日
風の冷たい季節、にも関わらず街は賑やかで、蚊帳の外から眺める他ない独り身としては、胸のうちまで冷え込んでくる。
それでも今年はこう言おう。
冬が寒くって本当に良かった。
いつになくはしゃぐ芹サンタを耳もとにお招きする為の、この上ない程の理由になるから。
そんな訳で芹サンタ、最初のパートでは普段通りの耳もとお世話、店員さんとお客さん。
ふたつ目のパート、いよいよ助手も小慣れてきた芹さん怪談劇場では、空間を表現する、舞台の部屋が主役のような音作り。関係は語り部と聴衆に。
最後のパートでは自分の周りをばたばたと動き回りながらあれこれ世話を焼いてくれる。お仕事じゃない素の芹さんの可愛らしさ、可憐さを堪能。
それぞれのパートで違った距離と関係が、音と物語を通して表現されているわけだ。
このうち特に怪談のパートで今回は感心させられた。
音で空間を演出する技法が極まっていて、みなまで言葉にしなくても状況が、部屋の温度が伝わって来る。
今までの作品であったようなガチ怖路線を排して、雰囲気の演出に奉仕するような話を選んでいるのが効果的だ。
最後のパートは芹さんのキャラクターで癒すことを主軸に置かれているのかな。
他と違って緩んだ空気が癒しのアクセントになっている。
そう。
あと何日かで今年も終わるから。
たまには二人でじゃま者なしで少し話して、のんびりして…。
サヨナラバスがやって来たらあの街に戻っていかなくちゃ、でも今はそんなに寒くない。
元気注入、なんておどけながら、芹さんの分けてくれた体温が、胸のうちに残っているみたいだから。
2017年09月23日
甘優しくリードしてくれるJKギャルは好きか?
じゃれあうようなイチャイチャは好きか?
手でしてもらうのは好きか?
………そうか、なら…こいつで間違いない。
てなわけで大傑作『文化祭JK手コキ喫茶』に続く(たぶん)、JK手コキシリーズ第二段。
さあ、心まで満たされるような愛に溢れたイチャラブソフトエロが好きな奴だけここに残ってくれないか。
からからとよく笑い、明るく人懐っこく、友達のような距離感の甘優し系ギャル、もみじちゃん。
不慣れなこちらを常に気遣いながら、しかし自分が楽しむのも忘れずフランクに楽しげにしてくれる。
イチゴシロップのような声で誘惑する小悪魔めいたあざと可愛いギャル、さくらちゃん。
前作に続けての登板となる彼女は、あの時と変わらない凄まじい破壊力の甘責めを仕掛けてくる。
そして最後は……
ちょっととんでもない事になるが、幸せ死にしないよう気を付けてな。
オレからはそれだけ。じゃ、楽しみな。
それにしても手コキって、ほんとにいいもんだよな。
2017年06月11日
東方についてあまり知識がないため、このシリーズを避けていたのだけれど、純粋に入眠/安眠向けにチューンされた催眠音声(少ないですよね?)が欲しくなって聴き始めた。
5作品ほど聴いてみたところで、とりわけ気に入ったのがこの作品。
作品の魅力は何と言っても個性的すぎるキャラクターだろう。
このシリーズは催眠音声にお馴染みな注意事項からもう楽しませようというのが伝わってくるけれど、今回は特に飛ばしている。
全開で笑わせに来て意表を突かれるが、しかしここからこの妖精はもう聴き手を自分の世界へと誘い始めているのだろう。
何しろ地獄に連れていってだの狂わせるだのと物騒なことを言われる。
術者を信頼できることが大切な催眠音声というジャンルでは、なかなかないことだ。
だから笑いを媒介にして聴き手との距離を自然に詰めているのだろうな。
本格的に催眠に入ってからのギャップも魅力的で、ここは声の演技が光る部分。
それまでの脳天気なノリと打って変わって、切なく悲し気な、庇護欲を掻き立てるようなところを見せてくる。
翻弄されるように深いところに降りていくと、そこで今度は甘く包むような表情を見せてくる。
そこまで長くない尺の中でくるくると場面を切り換えながら、巧妙にイメージを誘導して催眠状態へ導いていく。
催眠を邪魔しない音楽使い、リヴァーヴエフェクトといった部分もサークルさんが継続して用いられている手法だけに、うまく溶け込んでいる。
魅力的な寝物語のように様々な感情を味わって、最後には気持ちよく眠りへと落ちていく。
目が覚めると切なくも楽しいひと時を過ごしたことを憶えていて、そこにコロコロ変わる表情の可愛らしい少女がいた気がする。
また夢で逢えたら、そう思って、眠りしなにこの作品を聴き始める。