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「——お話ってなあに? お兄ちゃん」
ベッドに座った鈴が、まだまだあどけない表情で問いかけてきた。
鈴は、昨日もらった誕生日プレゼントの大きなウサギの人形を、ぎゅっと抱きしめている。
確かに鈴は俺の妹だ、——が、血はつながっていない。
親父が再婚した時の義母さんの連れ子、それが鈴だ。
しかし、そんなことを知ってか知らずか、鈴は何故だか俺によくなついていた。
特に俺から何かをしてやったというわけでもないのに不思議なものだ。
しかし、俺たち家族が「家族ごっこ」を今まで何事もなくやってこれたのも、そんな鈴の存在が大きい。
だが、「ごっこ」なんて遊びはいつか終わらせなければいけない。
俺は昨日、鈴の誕生日を祝ってやりながらそう決意していた。
そして今日、鈴の部屋にこうしてやってきたわけだ。
俺と鈴との「妹ごっこ」も終わりにしようと——
「鈴は、俺のことが好きか?」
「うんっ! わたし、お兄ちゃん大好き!」
鈴が笑顔で答える。
「……でもな、鈴。俺は本当のお兄ちゃんじゃないんだよ」
俺は単刀直入に切り出した。
「えっ? えっ? どういうこと? お兄ちゃん……?」
「血がつながってないんだ、だから本当は他人同士なんだよ、俺と鈴は……」
その言葉を聞いて、鈴の顔色が変わった。
「そ、そんなのヤダ! わたし、お兄ちゃんとずーっと一緒に居たいもん! 他人だなんて……」
「でも、本当のことだからしょうがないよ。俺と鈴は他人なんだ」
「やだやだやだ! お兄ちゃんと他人だなんて……、ね、ねえ……他人じゃなくなる方法ってないの?」
「……ひとつだけあるにはあるけど、他人じゃなくなる方法が……」
俺は少し勿体つけて答えた。
「じゃ、じゃあ、その方法でお兄ちゃんとわたしを他人じゃないようにして! お願い! わたし、お兄ちゃんとずーっと一緒に居たいもん!」
「……その方法はすごく大変なんだけど、鈴は我慢できるか?」
「わたし、我慢する! だからその方法でお兄ちゃんとわたしを他人じゃないようにして! お願い!」