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僕は孝之(たかゆき)、荒巻学園の3年生だよ。
自分で言うのもなんだけど……ドコにでもいる目立たない学生だと思う。
生まれてこの方彼女が出来た事もないし、趣味と言えば本を読む事くらいで……
おまけに背も低くて童顔だから良く女の子に間違えられる事も多いし。
なんていうか我ながら地味な学生生活だよ、ふう……
9月……夏休みボケも納まりかけたある日、いつもどおり図書委員に出るために図書室へ出向いた僕だけど……
なんていうかこの学校の図書室はあんまり利用されない事が多くって、委員会も結構いい加減だったりする。
2年生の時に僕が委員長になったものの、結局3年になって引退しても相変わらず僕が図書室に出向く始末。
だって……みんなサボってばっかりで出てきてくれないんだもんなぁ。
同じクラスで図書員をやっている女子の君島さんも、サボってばっかりであんまり委員会で顔を合わせた事がないし。
でも、そんな僕だけが顔を出している図書室に……その日、女神さまが現れたんだ!
図書委員を担当している先生から『来週から、専任の司書さんが来る事になる』とは聞いていたけど……
そこにいたのは僕が想像していたよなオバさんではなく、とびきり素敵な女性だった。
でも……僕は彼女を知っている。
そう……彼女の名前は『氷川撫子(ひかわなでしこ)』さん。僕が小学生の頃まではお隣に住んでいたお姉さんだ。
大学で教授をしているという彼女のおじさんの都合でロンドンへ行ってしまったが……
その時の僕は子供ながらも彼女に憧れていて、告白も出来ないままの自分に呆れて、何日も落ち込んだものだった。
そんな彼女が日本に帰ってきた!? それもこの学校の司書さんとして!
数年ぶりに再会した僕の事を撫子さんは覚えていてくれて、嬉しさいっぱいの僕だったが……
なんと彼女は僕の家のお隣にまた戻ってきたという話で、さらに幸せは最高潮に! 再会を喜ぶ僕たちは、つもる話をしながら彼女の家まで歩いた。
なんでも彼女は僕らの学校の卒業生でもあり、仕事場とはいえ懐かしさのあまり空港から直行したと言う事らしい。
またご両親は仕事の都合でまだイギリスに居るのだが、年末にはこちらに戻ってくると言う事で、まずは撫子さんが単身来日したと言う事らしい。
また、彼女の家は不在の間他人に貸していたりで痛みが激しく、現在リフォーム中だ。
リフォームの作業が終わるまでは近所のホテルに仮住まいとのことだったが……
同じく再会を喜ぶウチの母親が、あまりに突飛な事を言いだしたのだ。
「そんなのホテル代がもったいない。その間ウチに住めばいいのよ」……と。
前々からウチの母親は、長期出張中の父親の所に呼ばれていたのだが……僕には信用が無い様で、躊躇していたというのだ。
……しかし、当の彼女はニコニコと清らかな笑顔のまま軽〜く承諾!?
ウチの母親とお互いに頭を下げ合うと、あっさり同居が決まってしまったのだった。
トントン拍子に話は進み、撫子さんは客間に寝泊まりする事になってしまい、数日後には荷物も届くとの事だ。
あまりの幸せに殆ど放心状態の僕だったが……しかし、これもある意味生殺しだと言う事に気づく!?
だだだ、だって……何年も憧れていた撫子さんが、僕と一つ屋根の下に住むなんて……考えただけで鼻血が出そう……
そんな一人百面相の僕に不審がって声を掛けてきたのは、クラスメイトの君島さんと大輔君だ。
君島さんは同じ委員会として、大輔君は結構仲の良い友達の一人だ。
僕は二人とも個人的には仲が良かったけど……半年前くらいからこの二人はつきあい始めているんだ。
最近じゃ良く二人一緒にいるし、君島さんにお惚気を聞かされる事も結構あったり。
しかし、そんな君島さんは僕の話を聞くや否や、「そう言う時は……アタックあるのみよ!!」と息巻いている。
どうも、僕を撫子さんをくっつけようと、画策しているらしいんだけど……いや、気持ちは嬉しいんだけどね?
あきれる大輔君を後目に、「私たちの教訓を素に、アドバイスしてア・ゲ・ル・☆」とはしゃぐ君島さん……
でも、そんな困惑顔の僕がふと視線を図書室のカウンターへ向けると……そこには相変わらず女神の様な、撫子さんの笑顔があった。
それだけで僕の胸は高鳴り、これからの生活に……ちょっとエッチな想像までしてしまうのだった……