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………僕は………思いっっっっきり………悩んでいた………
その力一杯悩んでいる彼「染井 芳雄」(そめい よしお)は、1人暮らしをしているとある学園の2年生。
じつは彼の1人暮らしには理由があった。
父親が今時珍しい封建的な人物で、彼の進学校は勿論、その後の就職先や住まいまで全部決めてしまおうとしていたからだ。
そこで「自分の将来くらいは自分で切り開く!」という意思の元、コツコツと貯金と勉強に励み、
なんとか隣県の進学校の特待生資格を得ると、入学と同時に家を出た。
住まいは学生用のボロアパート、母に頼み込んで身元だけは保証して貰い、さらに担任に頼み込み、
本来は禁止されているアルバイト先を紹介して貰うと、それからはバイトと勉強に励んだのだった……
それなりに充実した毎日を過ごし、1年が過ぎたある日……
近況を母と電話で話していた所、急に父が割り込んできた。
「どうせお前には一人暮らしなど勤まらんのだから、とっとと帰って来い!」それだけなら何とか耐えるが、
さらに「甲斐性のないお前は嫁すらも選べぬに決まっている。ワシが適当な娘をあてがってやる!!」とまで言ってきた!?
頭に来た彼は「僕の将来は自分で切り開く、それに僕には結婚を誓った相手が居るんだ!」と、啖呵を切ってしまう。
怒りと勢いに任せた発言で、無論そんな相手なんて居やしない。
彼が自身の考えの足りなさを痛感したのはその数日後。
母から寄せられた手紙に目を通した時だった。母に言わせれば父さんの彼への態度は「親馬鹿」で、
彼の居ない所ではいつも心配していたという。
そこへ面と向かって啖呵を切ったものだから、もう本心は嬉しくて仕方がない
「アイツも言うようになった」とニコニコしているらしい。
おまけに「息子は将来を誓った相手を探してきた」とあちこちにふれ回って、今から孫の事を話しているとか。
正直、父親への反発心もあってここまでやって来た彼は、そんな真実に呆然。
母ですら「そのうちお相手の彼女を連れていらっしゃい♪」などと手紙に書いている。
……こういった状況を何と言うのだろう、四面楚歌?ちょっと違うか。
そんな折、バイト先のマスター「八重」さん、から夕食に誘われた。
食卓を囲んでいた時もそれが顔に出ていたのだろうか。
八重さんが心配して訳を聞いてきたので全部説明したら……呆れられた……しかし、
その後八重さんがとんでもないことを言い出した。
「なら……ウチの娘のどっちかとホントに婚約しちゃえば良いじゃない♪」
「はぁ?!」いきなりの物言いに赤面する僕。僕はただただ慌てたが、八重さんは
「ワタシだって、当の娘が本気で嫌がってたら、こんなこと言い出さないもん♪」と笑った。
その上、「じゃあ、もっと相手のことは知っておいた方が良いわよね」と、
僕にアパートを引き払って、明日からでもここに下宿するようにと言い出したのだ。
こうして僕は婚約を前提として、魅力的な先生と同級生の女の子と、
一つ屋根の下に住むことになってしまったのだった。