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■あらすじ
『若本五郎(わかもと ごろう)』は大学教授。
務める大学は一流だが、何事も大雑把で面倒くさがりの五郎はその中では落ちこぼれだった。
講義は適当、研究は他人任せ、無断欠勤多数など、問題を数え上げればキリがない。
それでもこうして五郎が今の地位にいられるのは、元々五郎が無能なわけではなく、
ひとたびやる気になればその研究意欲と成果は目を瞠るものがあるということを現理事が知っていて、
五郎を気に入っているからだった。
そして『立川勝也(たちかわかつや)』という有能な助手に支えられているのも、
その要因の一つである。
そのワイルドながらどこか愛嬌のある風貌と大雑把な性格が
学生の人気を集めているということも関係あるかもしれない。
だが、当然ながら五郎の存在に納得できない人物もいた。
五郎と同じく考古学の研究を行う女教授、『畑山実路(はたやまみゆき)』もその一人だ。
いや、むしろアンチ五郎派の最たる人物とも言える。
実路はことあるごとに難癖をつけ、五郎をうんざりさせていた。
実路の目には、五郎はただのいいかげんな人間としか映っていないのである。
そんなある日、実路は五郎の大学内における実態をレポートにまとめ、提出した。
五郎を大学から追い出すためだ。
レポートは会議の場で取り上げられ、教授達の間で問題となった。
そのことによって話は理事会でも持ち上がり、こうなっては理事長も庇いきれず、
五郎の進退問題にまで発展した。
結果、一定期間内に新たな研究とその成果を発表できなければ、大学を追放になることが決定した。
五郎は「冗談じゃねえ」と頭を抱えたが、決定事項である以上、
なにはともあれ結果を出さなければどうしようもない。
勝也の手を借り、すぐさま大学の資料室を漁り始めた。
生活がかかっていることが幸いしたのか、久しぶりに五郎の灰色の脳細胞は活性化を始め、
膨大な資料の中から気になる記述を見つけ出した。
それは、ある男が二つの不思議な玉を使って潮の満ち干きを操ったという伝承だった。
しかし、五郎はこの伝承とよく似た話を知っていて、その話は宮崎県の伝承だ。
─なぜこんな離れた島に、宮崎県に存在するものとそっくりな伝承が…?
長らく沸き起こらなかった研究意欲がこみ上げる五郎。
その脳裏には、今まで自分を見下していた実路の悔しそうな顔が描き出されていた─。
■登場キャラクター
●主人公:若本五郎(わかもと ごろう)
大学教授で、考古学者。務めている大学は一流だが、五郎はその中の落ちこぼれ。
真面目にやれば実力はあるが、あまり努力をしようとはしない。
何事も適当・大雑把で、自分勝手。心に棚をいくつも持っているタイプの人物。
●阿澄春乃(あずみ はるの)
どこにでもいそうなごく普通の少女。
何事も可もなく不可もなく。
八方美人で、皆の仲裁役。
●藤本日和(ふじもと ひより)
健康的で明るい少女。
しっかり者で気立ても良い。
春乃の親友。
●十川流(とがわ ながれ)
見た目の男っぽさに悩む少女。
大雑把で手が早いところはあるが、基本は女性的。
すぐウジウジ泣き、悩む。
●瀧野恋(たきの れん)
引っ込み思案な少女。
その上いつも暗い顔をしている。
●志乃森優香(しのもり ゆうか)
メガネっ娘。
よく慌ててドジをするが、一度失敗したことは繰り返さない努力家。
●藤本久美(ふじもと くみ)
『藤本日和』の姉。
いつも優しげでおっとりしているが、芯は強い。
●畑山実路(はたやま みゆき)
大学の教授で、五郎の同僚。
周囲には柔らかい物腰で受けが良いが、五郎のことは見下しており、何かとキツく当たる。
五郎を大学から追放しようと画策する。