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「純愛」と評されることも多い本作。確かにそういう向きはあり、いわゆる羽化エンドや日常エンドはいずれも異なる方法での愛の結実と言えるでしょう。しかし、個人的には、本作はわかりやすい「セカイ系」であり、入門としても楽しめると言いたい。

セカイ系は識者も一介のオタクも好き勝手に定義しているものの、ここでは「セカイ or 女の子」の二者択一を迫るものとしたい。それで言うと、『沙耶の唄』の日常エンドは「セカイ」、羽化エンドは「女の子」を取っているという理解ができます。ほとんどノイズ無くセカイ系を理解することができる点、そしてプレイヤーが選択という決断によってどちらを選ぶかという主人公の感情を追体験できる点。これらにおいて『沙耶の唄』はセカイ系の入門として傑作と言えるでしょう。

無論、入門だからという理由でもっとのみオススメしているわけではありません。確かに本作はわかりやすくセカイ系していますが、そこに付随するビジュアルやテキストの美しさがそれを引き立てているのも間違いありません。羽化エンドの沙耶に翼が生えるCGの美しさは印象に残る人が一定数いるでしょう。